六車由美「驚きの介護民俗学」、家族の神話

 

父方の祖父が中島飛行機に勤めてまして。
零戦作ってた。らしい。
ここからすでにダウトなんですが…
いや、よく聞くと作ってたのは「増槽」みたいなんですけど… 中島飛行機そうなの…?
 
これは家族の神話です。
断片的すぎて、ざっくりし過ぎてて今となってはよく分からない。聞き違いやシロウトの伝言による事実誤認もありそうです。
 
祖父は、群馬県太田市中島飛行機に就職して、戦時中、名古屋の工場に出向してたらしい。
半田製作所なのかしらね?(ググりながら
 
亡くなった日が、昭和20年3月10日。
享年37歳。
誰もが苦労した時代に、一家の大黒柱を失った父の一家は、戦後たいへんな苦労をしたそうです。ムリもない。
インパクトの強い日付なので、ばくぜんと親戚一同は「空襲で死んだ」と思ってた。ようだ。
大人になって、オタクになってから調べたら、名古屋はその日は空襲なくて!
よく聞くと、夜に帰宅せず、倒れて冷たくなっているところを翌朝発見された。らしい。
遺体に目立つ外傷はなく、死因は「心不全」と。
戦時中で、人手がなく詳しい死因が調べられなかったのでしょうか。人の死がありふれたものだったので、諦念とともに、死の事実のみ受け入れたのでしょうか。
過労と栄養不良で、突然死というのも十分ありそうですが、今となっては分かりません。
 
21世紀になってずいぶん経ってから、六車由美「驚きの介護民俗学」という本を読んでショックを受けました。
著者は、介護士として働く民俗学者です。
入所中の認知症のお年寄りから戦争体験を聴き取り、資料の裏付けをとってまとめたそうです。
「茫漠とした〝戦争の話〝を語るうちのおじいちゃん(たぶん同じ話を繰り返し話してる)」が、日時と場所が特定されたことにより、まぎれもなく歴史の証人であると分かり、家族も介護スタッフも深い感動に包まれたそうです。
それ、同じことをわが家でやってもいいのでは?
 
ところが。間に合いませんでした。
具体的な地名や時期を知っていたはずの祖父の弟たちは相次いで鬼籍に入り、祖母も認知症となっていました。
 
終戦当時5歳の父も、最近ちょっと怪しくてね…
 
それにしても「シリーズケアをひらく」は当たりばかりでびっくりだ。
有名著者を連れてきてるケースもありましたが、現場で働いてきて、あるいはユーザー側でずっと来て、はじめて本を書きます!みたいな人が多い。のに驚異のこの打率。
 
最近では東畑開人の「居るのはつらいよ」も面白かった。