『揺籃の星』上下

揺籃の星 上 (創元SF文庫)
揺籃の星 下 (創元SF文庫)
 ジェイムズ・P・ホーガン

 知的好奇心が政治や古い常識に妨げられることのない社会。
 人々は商品(その価値だって企業が作り出している)を買うために働くのでなく、個人の「価値」すなわち知識と能力を証明するために働き、それが正しく評価される社会。
 そんな社会を夢見て、人々は土星圏のコロニーに移住した。
 彼らはクロニア人とよばれる。


 協力して宇宙を目指そう!フロンティア精神あふれるメッセージを携えたクロニア使節団が地球を訪れる。しかし、彼らを迎えたのは、旧弊な地球人による卑劣な政治の罠だった!
 彼らのもたらした新発見は、政府の意を受けたマスコミによりトンデモ説のレッテルを貼られ、公正な検証抜きで葬り去られようとする。クロニア人自体、でっちあげのトンデモ説で地球人から援助をだまし取ろうとする卑しいペテン師集団だと辱められてしまう。
 主人公はクロニア人が正しいと証明することはできるのか!軍により拘束されたクロニア人を救い、若く美しいクロニア人女性の愛と信頼を取り戻すことができるのか!地球人類は怠惰な事なかれ主義から脱しフロンティアに向かう勇気を取り戻すことはできるのか!
 とかなんとかせっかく盛り上がったのに、クロニア人の正しさ、いや地球人の愚かさは事実によってアッという間に証明され、続いて下巻では趣向を変えて『ディープ・インパクト』をお送りしま〜す(違) 金子隆一氏が激しく葛藤しながら書いたと思われる解説も必読。


 ↑ちょっと今、なげやりな気分になっているので紹介がなげやりでごめんなさい。
 ホーガン先生の初期の大傑作にして代表作『星を継ぐもの』って、エスエフのエの字も知らない純真な少女*1にSFってのは面白いんだッ!と強烈に刷り込んで下さった作品なので…
 それからン十年経って薄汚れた大人になってからも、同じ作者の新作で常に同等の興奮を得られるだろうか(反語
 今なら、無理だよなあ。と冷静に解答できます。私が期待しすぎたのだと思います。
 人生の初期、適切なタイミングで傑作を読むことができた奇跡を感謝するべきだと思います。ですが、一生に一度級の悦びと、それが二度と体験できないことを知ってしまった今、自分の運命を呪いたい気持ちでいっぱいです。


 えっ、これって三部作の第一部にあたる作品なの?
 じゃあ次作に期待!期待!期待!

*1:私のことです(笑)