『めぐみ』
横田めぐみさんと、横田さんご夫妻のドキュメンタリー映画です。
見てきました。
つねづね横田さんご夫妻は凄いなあ、と思っていました。
一時は国が「なかったこと」とにしていた問題を、あきらめず訴え続けて、ついには国を動かしてしまった訳で。
ほんとうに凄い。
映像の力を思い知らされました。
拉致被害生存者5人が帰国するシーン。
幼さの残る拉致当時の写真に続いて、中年になった彼らの映像。間違いなく若き日の面影があること、その面影に年月の経過が跡を残していることを雄弁に物語っていました。
そして彼らを出迎える、年老いた家族。
深いしわの刻まれた家族の顔立ちにも、彼らと共通する線がたしかにあって、
なんて言葉で書くととてもまだるっこしいですが、
拉致当時の姿と今の姿と、親と子のそっくりさを目の当たりにして、雷に撃たれたように彼らのこの30年の運命の不条理さ不自然さが理屈抜きで痛感されました。
それにしても横田さんご夫妻はすごい。
つねづね温顔だなあとは思っていましたが、ほんとうに温顔だ。そして立ち居振る舞いが控えめで。
あの国の「嘘」で、もっとも傷ついた人たちだと思います。他人の遺骨を偽って届けるなんて、ほんとうに酷い。
ご夫妻が、もっと怒りを露わにしても世間は許すと思うのですが、彼らは感情を高ぶらせても決して「鬼の形相」にはならないし、発言も、あんな目に遭わされた人の発言とは思えないほど慎み深い。
控えめに静かに耐えている。でも諦めない。希望を捨てない。
同時代にこのような人がいるのを見て、心底驚いてしまいました。
それに比べ、官房長官時代の安倍晋三の悪相ぶりはどうしたことか…
気になった点は、偽ジャパネスク様式のBGMの音量が大きすぎるように思えた点です。たまに、登場人物の発言とかぶっていて聞き取りにくい所がありました。
そもそも、日本で暮らしていて日本の風景に和太鼓や笙の音がかぶる経験をすることは、現実では稀ですから、かえって現実感をそこねるみたいで気になります。
スタッフロールで流れる文字が、駆け足のように速かった。これはミスではなくて尺の問題じゃないかと思うのですが?
この問題にもちろん関心があります。
めぐみさんに無事に帰ってきて欲しいなあ、と思います。
ですが、積極的なアクションをしたことはありません。
この映画の入場料を支払ったのがはじめてのアクションらしいアクションではないか。
恥ずかしいことです。