『ナルニア国物語〜第1章ライオンと魔女』

 凡人がちょっと異世界に行ったぐらいで英雄になれるもんか、と言いたい。
  →Yes/No?

 まず、原作を読んでいないことをここに告白し、あなたの寛容を伏してお願いたい。


 物語は、第二次世界大戦中のロンドンから始まります。
 最初に思ったこと→イギリスも学童疎開ってやってたのかー。
 とと、帰ってきてから調べてみたら、英国政府は早くから学童疎開を計画していたそうです。ドイツのポーランド侵攻で計画を実行に移し、2日後のドイツへの宣戦布告の時点では、ほとんどの児童がロンドンから疎開していたらしいです。
 太平洋を隔てた国と戦争した我が国とは危機感が違ったのでしょうか。
 (映画では、ロンドン空襲?の後に集団疎開の場面がありましたが…?)*1
 疎開=トラウマというイメージがあります。
 筒井康隆のつらい疎開体験(たしか山形だったと思う)を読んで知ったと思う。彼は、地元の子供となじめずいじめられたりと辛い思いをしたそうです。故郷と親元を離れた孤独な状態でのそのような体験は、一層耐え難いものであったろうと容易に想像されます。多くの人が戦時中、同じような体験をしたと聞いています。
 イギリスでも似たような事情だったのかなあ、とプロローグ段階で涙してしまいました。
 主人公の4人の兄妹は、ロンドンから遠い田舎のお屋敷に預けられます。
 父は兵士として出征しています。つまり戦死の可能性がある訳です。
 母はロンドンで留守宅を守っています。つまり空襲で死んでしまう可能性がある訳です。
 泣く泣く母と別れて、長時間の汽車の旅の末に、やっと着いた無人駅。
 心細い思いで駅に降り立った子供たち。
 不安でいっぱいな彼らを出迎えるのは、優しい笑顔であって欲しい。
 見ている者の願いも空しく、駅にあらわれたのは厳しそうなオールドミス。
 連れて行かれた館は、がらんとしてしんとしています。
 オールドミスはヒス入ってると判明。
 里親となる老教授は、子供に関心が薄いらしい?
 ここで子供たちが寂しく、不安で、愛情に飢えた気持ちになるのは当然だと思います。
 子供らしい空想の世界に慰めを見いだすのは仕方がないことだと思います。
 この映画が、彼らが暗く暖かいクローゼット(こう書くと子宮を連想しますね)の中に籠もって作り上げたファンタジーかと思うと、胸がしめつけられるようです。
 てか、きょうだい4人揃って同じ白昼夢を見るなんて、そうとう病的なんじゃないか…。
 辛いよね、疎開。ストレスだよね、疎開。
 涙なしでは見られません…。



 なんてなー。
 疎開云々の導入はごく短くて、物語のメインではありません。ラストでちゃんと救済があるし。
 また、白昼夢じゃなくて事実です(よね?)
 枝葉にこだわって変なツッコミを入れてみました。すみませんすみません。
 あんまり真に受けないで下さい。


 とりあえずアレですかね。
 ぴかぴかの甲冑を着込んだケンタウロスの騎兵隊…ももも燃えるッ
 ケンタウロス騎兵隊の騎兵突撃…燃えるッ
 ケンタウロスの将軍が二刀流のテクニカルファイターでますます燃えるッ
 3秒ぐらいの見せ場でしたが、ケンタウロス将軍が人馬一体(てか本人だし)の変幻自在のギャロップから繰り出す二刀流に、体が震えました。
 敵の重装備のミノタウロス将軍がまた…燃えるッ
 こう、こう、大柄で体が厚くてね、ケンタウロス二刀流とは対照的なパワーファイターで燃えるッ
 異世界に行ったぐらいで人間の子供が大人と白兵戦ができる訳がない、と突っ込みつつも、甲冑に身を包み白い一角獣にまたがった長男は、悔しいけど格好いいと思いました。
 ぜひこれは映画館で見て震えるべきだと思います。
 RPG大好きッ子は特に。


 知性のない、ケモノとしての動物って、ナルニア国にはいないようですね。
 亜人類だけでなく、動物も当たり前のようにしゃべるしゃべる。
 しゃべりまくるビーバー夫妻や、しっぶい低音の秘密警察の狼とか、アスラン獅子王とかすっげぇ良かったです。ホンモノにしか見えなかったです。
 ビーバー夫妻は、しゃべりも仕草も人間くさくて参りました。人間くさいというか、すっごくオッチャンオバチャンくさい。時間の関係で吹き替え版を見たのですが、吹き替えがまたイイ具合にジャストフィットで、たいへんな破壊力でした。映画館でぬいぐるみが売っていたら、絶対買って帰ったと思います。
 動物キャラや亜人類はどうやって撮ったのでしょうか。フルCGなんでしょうか。演技とかどうやってつけたんだろう。動物亜人類が1万人ぐらい入り乱れる戦争の場面とかあるんですけど、どうやったんだろう。
 とと、公式HPにメイキング映像があります!
 戦争の場面のモブについては、革命的な技術革新をさらっと言ってるような気がしますぞ。
 人間がモーションをつけたモブキャラを単に配列するのと、簡単なものとは言え人工知能搭載のCGキャラクターが独自の判断でモブを演じるのとは、100万光年の差があるような気がするのですが!
 21世紀に生きてて良かった。


 ところで。
 氷の魔女が、激しく既視感を感じる女優さんでした。
 『コンスタンティン』でガブリエルやってた人かーーー!?(喜)
 子供たちはちょっとブサイクかも、と思いました。
 クリーチャーがイケメン揃い(白眉はアスランだと思います)なので、なおさら。
 特に前半はストーリー上の都合でギスギスしてて、どの子もひときわかわいくないですね。特に、次男のクソガキぶりは特筆に値すると思いました。*2
 対して、末妹は雰囲気美少女かも知れない。
 でも、いちばんの萌えキャラは、タムナスさんだと思いました。

 公式HP
 http://www.disney.co.jp/movies/narnia/shell_content.html


P.S.
 わたし、ラストシーンが邯鄲の夢みたいで、すっごく寂しく空しい気持ちになってしまったのですが…
 また行けるよと保証してもらえて、ちょっとほっとした。

*1:ポーランド侵攻&宣戦布告が1939年9月、ロンドン空襲は40年7月以降、本格的には8月からと手元の年表に書いてあります。ありゃん。

*2:原作を見たら、悪い魔法がかかってたらしいです。