『亡国のイージス』--感動したっ

 イージス艦や戦闘機がオトコマエに写っててドキドキした。
 海上自衛隊の白い制服がいっぱいでドキドキした。白い制服姿の吉田栄作の足がすっごく長くてびっくりした。いいもん拝んだ。
 真田広之先任伍長*1は線が細すぎで端正すぎだと思いましたが、泣きべそをかく風間三尉をグーで殴る姿は良かった。
 あの長〜くてこみいった原作のモチーフをよく2時間に詰め込んだものだと、激しく感動しました。短い断片的なカットでとは言え、あれも入れるのか、これも入れたのか、と驚きっぱなし。スカスカなダイジェストか完全別物を覚悟していた己を恥じました。画も演技も良くて今年の福井晴敏映画3連発の中でいちばんイイと思います!


 説明セリフを少なくして、短いカットの中俳優が万感の思いを込めて目線で語るなどの「語りすぎない」姿勢は、味わい深く魅力的だと思ったのですが、語りすぎないは分かりにくいに通じる訳で、予備知識抜きで映画に臨んだ人がどこまで理解できるのかとても不安です。てかダイスとか辺野古ディストラクションとかGUSOHとかの福井造語がばんばん飛び交うので(他人事ながら)(別の意味で)ちょっとハラハラしちゃった。
 ダイスなんかナシで、「メイドインUSAの化学兵器を持ったテロリストと反乱将校がイージス艦を乗っ取りました!」から話が始まって、「沈黙の戦艦」と「ザ・ロック」を足して2で割ったような展開でも良かったような気もしますが、あえてややこしい背景要素をできるかぎり詰め込もうとした姿勢に原作への愛を確かに感じた。
 けどやっぱり、あの女の子がホ・ヨンファの妹だと劇中で言葉で説明されていないのはどうかと思う。家族写真のヒントを見逃したら、彼女がやられてキレたのかと思うんじゃないか。違うんだ、冷徹な工作員が重度のシスコンを秘めているって所がいいんじゃないかっ*2 *3
 って一事が万事そんな感じで、原作を読んで気に入ったら、良くできた映像化として楽しむのが正解のように思いました。映画だけ観たら意味分かんないと思う。
 あっ、パンフの巻末に台本と(野暮なくらい詳しい)台本解説がついてる…!


 不満な点は、宮津とうらかぜ艦長の阿久津の関係が整理されちゃったこと(尺の都合上しょうがないかな…)、竹中と宮津の深〜い信頼関係の描写が手薄な印象を受けたこと、走馬燈とホ・ヨンファの驚愕(と某超大国の陰謀)が省略されちゃったこと。あと先任伍長の中年期危機が省略されてたのも不満、かなあ。自衛隊でも家庭でも行き詰まっていたおっさんが、職業人の意地とプライドで鬱屈から抜け出すのが燃えるんじゃないかー。
 握美(佐藤浩市)と瀬戸(岸部一徳)はフィーチャーされてたと思う。てかこれからはこの二人がモテるッ(腐女子発言)


 わたしが福井先生の作品を読んでいていちばんキッツイと思ったのは、クセのある国家論とか金太郎飴風のキャラクタ造形ではなくて、主要登場人物のヒットポイントです。
 映像で見たら「ふつう、それ、死ぬって」感がいっそう生々しくて参った。
 あんなに血が出たら死ぬって。


 あの方の感想が、来た!
 イナカモノはアソコがどこか分からなくてイメージ映像として流してしまったのですが。そ、そんな深いカットだったとは…
 id:Projectitoh:20050805

*1:ぜったいありえないけれど、この人はブルース・ウィリスに違いないと思って本を読んでいたので、未だに頭が切り替えられません

*2:一晩考えて、彼らがどこの国の人間かはっきり言葉で言われている場面もなかったような気がしてきました。制服、身のこなしセリフのはしばしに北っぽさは十分に出ていると思ったのですが、不親切じゃあないかしら。

*3:ネット上の感想を見るに、宮津と行の最後の対話のシチュエーションが分かりにくいようだ。いい場面なのに勿体ないことです。