昨日の続き

 『黒い仏 (講談社ノベルス)』が何か後半しょんぼりだったのは。
 つらつら考えるに「謎解き」場面と情緒の盛り上がりが一致しなかったからではないかなあ、などと思いました。遠い記憶をたどって横溝正史などを想い出すと、名探偵が謎を解くと同時に動機も明らかにされ、それと共に関係者の隠されていた感情が表出されて、それが読者のカタルシスにつながっていたような?
 そう言えばこの作品では謎解き場面では誰も取り乱していなかったのでした。
 そのせいかなあ。
 でも探偵と助手の関係が、 ダメ上司介護型だったので、その点は深く満足しました。他の作品にもこの二人は登場してるのかなあ。うずうず。


 IKKI3月号の「月館の殺人」ですが。なにかいつもの佐々木倫子作品と違う、ぎこちない印象を受けました。
 小心で知識と経験に乏しいヒロインが、鉄道マニアたちの(不審な)挙動にビクビクする場面が延々と続いて、それは面白かったです。が、その辺の展開が何かぎこちないような?
 後半、主人公はおそらく間違った推測をしていて、自分の(間違った)考えで自分の焦りを強めているだけだと思われます。その呼吸こそが佐々木倫子作品の面白さだと思うのですが、主人公のパニックが最高に高まって、そこで次号に続く、ってのは、えーと、新パターン?(汗)
 思えば今までの佐々木倫子作品は一話完結が多く、極度のぱにくり→勘違いと分かり緊張緩和(同時に笑い)でオチて完、というパターンが一話の中に含まれて…ましたよね?*1
 が、極度のぱにくり状態で来月まで放置される、というのははじめての体験で、わたしは一体どうしたら!オチはどこにあるのでしょうか。欄外?巻末?公式HP!?(狼狽)
 いや、オチは来月号だろうと分かっています。ちゃんと分かっています。冗談です。
 でもこの宙ぶらりんな気持ちを来月までどうしたら!
 コミックスでまとめて読んだら違うのかなあ。


 アワーズ3月号を買いました。「ヘルシング」の見開きでゾクッとしました。シワにクマ、左右非対称な顔、ふつうなら減点要素となる点がすべてプラスに転じてキャラクタを魅力的に見せていて、そのマジックにいつも感嘆してしまうのです。でもちょっとアラゴルンかと思っちゃった。「エクセル・サーガ」コッソリと渡辺君が好きなので、彼のために涙しました。一瞬、今度こそ渡辺君が幸せになれるのかと騙されちゃった。やっぱり生粋の不幸キャラの渡辺君が幸せになるなんて最終回以外ありえないのかなあ。「アニメがお仕事!」表紙2回目ですね。人気があるのでしょうか。カワイイ絵と健気な主人公に騙されがちですが、実態はすっごい鬱漫画だと思います。ダメ人間として登場する人々の卑しさは、ちょっと半端でないです。こんな卑しいキャラクターは見たことない。しかも一人じゃないんだ。いっぱいいるんだ。対して、主人公をはじめとする志ある人々の、自分は名をあげることができず「その他大勢」として埋もれて終わるんじゃないか、って恐怖も怖いです。力が底なしの虚無に吸い込まれていくようです。ストーリー上、ダメ人間と挫折と落ち込みがあってこそ主人公のがんばり(と成功)が光るのでしょう。ですが、物語が序盤で主人公の成功は未だささやかなものでしかなく、二太くんはダメスパイラルに入ってるしで、現時点ではネガティブ要素の描写により多くの気合いが入っているように見えてしまい、だからわたしはこの漫画が怖い。お願いだから二太くん、サクセスして下さい。

*1:おたんこナース」と「HEAVEN?」はコミックスで読んでいたので、連載時は一話完結じゃなかったらどうしよう、と不安に思っています。