「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」--ホラー…?
実家の物置からラヴクラフトの本を発掘してきました。暑気払いにちょうど良いかと思って。なのに急に涼しくなるなんて!なんて!
しみじみと再読して、ラヴクラフト先生はネタをひっぱり過ぎると思いました。
読者のほとんどにオチが読めてしまってもまだ引っ張って、時には引っ張りっぱなしでお終いにしたりするような気がします。ひどい作家だと思います。
でもね、億単位の年月をさらりと語る話が好きです。ついでにぐるっと一回りしてもとにもどる話が好きなので『銀の鍵の門を越えて』『時間からの影』あたりが好きです。ところで、『時間からの影』って怖い話でしょうか。私が主人公だったら大喜びしちゃうような気がするんですが。
それから『神殿』に登場するUボートがやけに性能がいいように思えました。古代超文明の遺物をドイツ軍が接収してUボートとして使ってたりして。船を導いたのは呪われた象牙細工じゃなくて船そのもの。な訳ないか。
で、『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』をはじめてちゃんと読んだのですが…
不謹慎ですが笑ってしまいました…。
一種の短編連作で、死者を生き返らせることに執着したハーバート・ウェスト先生が毎度まいど奮闘むなしく盛大に失敗するお話です。
最初のエピソードで、なぜ実験が成功しないかうすうす分かってしまいます。素材の鮮度とか薬液の性質とかそういう物理的な理由じゃないんだろうなあ、と。なのにハーバート・ウェストは物理的な理由だとかたくなに思いこみ、ますますズレた方向に情熱をほとばしらせる訳です。だから毎回、非常な努力の末に同じ失敗を繰り返す訳です。
つまり…1話完結のギャグマンガのスタイル…ではないかと…
そう言えば、人並み外れた能力を持ちながらズレているカリスマ・ハーバート・ウェストと、語り手である凡人の「私」。いい加減にしてくれよと思いながらも、いつも断り切れずに実験につき合って巻き込まれちゃってる「私」。*1
ああ、これって、ファーザーとオンナスキー。マサルさんとフーミン。
一度そう思ってから、もうダメっす。
確か唐沢なをきの『ホスピタル』に登場するハーバート西先生というキャラクタの元ネタがこの作品なのだと、昔どこかで小耳にはさんだ知識も邪魔します。全部なをさん絵に変換されてしまい、毎回、似たような、それでいてよりひどくなっていくハーバート・ウェストの紹介で始まるスタイルも、なをさん得意のくり返しギャグのように思われてしまって…なをさん絵なら死体もバケモノもなんだか可愛いよ…ハーバート・ウェストだって本当は楽しんでいるに違いない!あれくらいで死んだりしないって!
ラヴクラフト先生ごめんなさい…orz
えーと。
突然ですが、少し腐女子視点で語っていいですかッ!
ハーバート・ウェストって、美形みたいな気がするのです。
初登場時20代なかば、ラストで40歳ぐらいかも知れませんが、でもやっぱり妙に美形みたいな気が…?*2 あッ、お客さん帰らないでっ。
文中にあるハーバート・ウェストの外見的特徴↓
・こがらでやせている・上品な顔に眼鏡・髪はブロンド・目はあわいブルー・優しい声・性格は穏やか・髭はきれいにあたっている・動作は機械のよう
ざっと見返したのですが、容貌については「上品な」ぐらいしかプラスの形容詞が見あたらないようですが…うーん、なんでだろう。ハーバート・ウェストの外見の描写にかぎって、「冒涜的な」とか「慄然たる」とかラブクラフト先生の大好きな形容詞なしで普通に書いてあるから、かなあ? 「眼鏡をかけたブルーの目」とか。
えーとスイカに塩の原理…?(ちがうかも)
『ラヴクラフト全集5』(ASIN:4488523056)