『スターシップ・トゥルーパーズ』--反戦映画?

スターシップ・トゥルーパーズ [DVD]

 今週の土曜日、『スターシップ・トゥルーパーズ』をテレビで放映するそうですね。
 嫌な面白さのある映画だったなあ、ビール片手にテレビで軽く見直すのも楽しいかもなあ。宇宙船とか巨大虫にマシンガンぶっ放しまくる場面とかワクワクしたし、馬鹿プロパガンダCMとか笑えて良かったしィ?とアレコレ思い出しているうちに、DVDを引っ張り出してきて、思い出の場面をピックアップして見るつもりがほぼ全部見てしまいました……だって嫌な面白さがあるんだもん。土曜日は心おきなく飲みに行けそうです…orz


 それはそうと!
 ヘンな面白さがあるから未見のかたは是非!
 残虐非道な巨大虫相手に、陽気で怖いもの知らずの兵隊さん達がマシンガンぶっ放し放題!英雄的自己犠牲で仲間を救って涙を誘ったり!その悲しみを闘志にかえてなおも戦え!戦友の仇はぜったいに俺が討つ!そして青年は真の男になった!というストーリーなのに見終わった後は好きこのんで兵隊になるなんてぜったいアホだ。戦争反対。って気分になるミラクルな映画です。
 ああ、だから終戦記念日の前日に放映するのかなあ?(違)*1
 確か、上映当時は虫さんたちとフル装備の兵隊さん達のトイが売っていました。このトイで悪の虫をカッコ良く討伐するヒーローになった気分で遊ぶ子供がどこの世界にいるのだろうかと疑問を感じましたっけ。勇ましい言葉で持ち上げられ、馬鹿な作戦に従ってゴミのように惨殺される兵隊になりたいと、アレを見て思う子供がいるのかしら(反語*2
 それに、明らかに歩兵は使い捨てだと思われていますよ、あの世界では(ブルブルブル)。1時間に戦死者10万人とか、サラッととんでもない数字が出てくるし。軍事作戦で失敗してこんなに犠牲者を出して政権が吹っ飛んだり革命が起きたりしないのかしら。
 だいたい、アーマーごと人体を両断できる巨大虫相手に、わーっと歩兵がマシンガンを撃って、そしたら何千と虫が出てきちゃってわーっと逃げるとか。作戦もなにもありゃしない。せめて戦車を。もっと頑丈な基地を。もっともっと航空支援を。そもそも生身の兵隊を敵の本拠地におろす必要性があるのかどうか。素人めに見ても、司令部はアホだとしか思えません。


 その上主人公が馬鹿としか…
 軍服の似合う美人・カルメンの尻を追っかけて軍に志願して、カルメンは成績優秀だからパイロットになって、主人公は成績不良だから歩兵部隊に回されちゃって散々な目に遭います。
 個人的には、ディズがいい娘さんで好きでした。主人公も、カルメンを追っかけたりしてないで、おとなしくディズに捕まって尻に敷かれてまっとうな市民生活をエンジョイした方が良かったのではないかと思います。つかディズみたいないい女がなんで主人公みたいなお馬鹿さんに惚れているのでしょうか。実はディズも頭が悪いのでしょうか。
 再見して、主人公を惑わしたカルメンがなかなか魅力的だと思わないでも…?(初見時はひたすら嫌いでしたが) 元気で反射神経も良くて頭も良くて、スリルを楽しめる度胸の持ち主で、生まれついてのパイロットの資質を持っていたと思う。根性もあったし。だけど高校時代はスポーツ万能の同級生、社会に出てからはエリートパイロットと、その時々で都合のいい男と交際したがるのはどうか。自分の宇宙船を持つという夢に向かって一生懸命で、恋愛は二の次だったのかなあ。と好意的に解釈…できないや、やっぱり。
 アクション映画の定石的に英雄的な自己犠牲で涙をさそいつつ三角関係が清算され*3、必要以上に躁病的なラストシーンで映画が終わるのですが、政治体制の善し悪しとか戦争の是非とか悲惨さとか、そういうの一切抜きで安っぽい勇ましい音楽に乗って主人公が勇ましいセリフを言うとってつけたようなハッピーエンドでスタッフロールに入るのですが、この直後に全員戦死してても不思議じゃないよなあ。と思ったりします。


 原作は(一応?)ハインラインの『宇宙の戦士』です。
 『宇宙の戦士』のウリはパワードスーツであり、この作品と加藤直之とスタジオぬえのデザインしたパワードスーツの表紙&口絵がなかったらガンダムもなかったと言われるくらいだと聞きますが、予算の都合か監督の趣味か、映画の方にはパワードスーツは1ミリも登場しません。
 ぺらぺらと原作を見ていたら、主人公たちの母艦「ロジャー・ヤング」号の名前の由来を見つけました。1943年ソロモン群島のニュー・ジョージア島で、命と引き替えに敵の機関銃陣地を爆破して味方の脱出を助け、死後名誉勲章を贈られた兵隊さんの名前をとったのだそうです。
 この敵っての、はっきりとは書いてはないのですが、日本軍じゃなかろうか。
 昔、じいちゃん達はアメリカとマジで戦争してたんだなあと思うと、ビールを飲みながらこの映画を見て笑ったり、映画館に2回も見に行ったり、DVDを購入したりしてはいかんのじゃないかと思ったりもしないでもない。

*1:多分「スターシップ・トゥルーパーズ2」の宣伝のためだと思います

*2:つか残虐描写が多すぎて、子供は見ちゃダメってコトになっていたような気がします?(しばし検索)…あっ、父兄同伴なら見て良かったのか!日本ではPG-12、アメリカ本国ではRでした。父兄も帰り道説明に困ったのではないかなあ。

*3:生き残るのがそのメンツでいいのかという疑問も感じました