平泉,VR2年

 聞くところによりますと、昨年がVR元年であったそうです。

 平泉に行って、平泉にはVRが似合うと思いました。

 だって…なにもないんだもん…

 本を見れば、世界遺産「平泉」には、

中尊寺
毛越寺
観自在王院
無量光院跡
金鶏山

 と5つが登録されています。
柳之御所跡遺跡は、ギリギリまで議論されて選に漏れたそうです?)
 5番目は山ですね。山。低山。
 注意深くリストを見れば、3番目と4番目には「跡」の文字がついているのに気がつきそうなものですが私は気がつかなかった。一夜漬けで。

 「跡」表記に気がつかず、行ってみたら空き地で!

 空き地は言い過ぎか…池が再現され、建物の場所が示され、残りは芝生で美しく整地された空間でした。
 ああ、観自在王院跡でキャッチボールをしてる親子を見ました。


 そして毛越寺毛越寺はフェイントでした!
 東北の4つの寺を巡る旅へ誘う「みちのく四寺回廊」
 http://www.shijikairou.com

 というキャンペーンをしてるし、山門と新しい本堂があるから騙されてましたが(私だけかな)、メインは跡地でしたよ…

 本堂の北に美しくデザインされた人工池があって、かつて北岸に大きな寺院があったそうな。礎石の跡からそれと知れる。
 大きいだけではなくて豪華絢爛だったそうです。
 ソースは「吾妻鏡


 どうですか、世界遺産登録5アイテムのうち、3つが「跡」(なにもない)。

「かつてすごい物があった」と「でもいまはなにもない」の落差。

 無の認識。欠落の自覚。

 目に見えないものを見た。

 ショックというべきか感動というべきか、ちょっとなんと言っていいかわかりません。
 そういえば芭蕉の「夏草や 兵どもが 夢のあと」はここで詠まれた句でしたね。うわあ同感です。100パーセント同感です。芭蕉すごい。

 行く前に最初に読んだ本が、斉藤利男「平泉 よみがえる中世都市」(岩波新書)でした。
 最初の章は、1988年の「柳之御所跡遺跡」発見と、その発掘現場にかけつけた興奮が綴られています。
 1988年の11月、強い雨と風の中を、著者は時間を経つのも忘れて発掘現場を歩き回ったと書かれています。
 同じ季節にここに行ったから分かります。
 5時頃には日が沈んで真っ暗で、すごく寒いよ!
 そういうのを忘れるぐらいの興奮と感動だったのでしょうか。
 本に「すごいよ見て!!!」と言わんばかりに発掘現場の写真が載っていますが、申し訳ないのですが、水たまりのある泥んこの空き地です。
 知識のある人には、この水たまりが堀、こちらは柱のあと、とちゃんと意味が見えて、在りし日の建物も見えてくるんでしょうね…そうか脳内VRか…とちょっと呆れました。

 でもちょっとうらやましかった。


 長年研究をした著者の体験を、不勉強な私でもVRなら追体験できるのでしょうか。

 平泉とVR、相性がいいんじゃないかなあ。

平泉―よみがえる中世都市 (岩波新書)

平泉―よみがえる中世都市 (岩波新書)