松本敏治「自閉症は津軽弁を話さない」

 今年はスゴイ本に出会ってないかも知れぬ…と思っていたら、12月になってスゴイ本に出会いました。
 タイトルが飾り気ないのかパロディなのか判断に迷います。
 「ブギーポップは笑わない」「ダイヤモンドは砕けない」に似てる…でしょう?
 
 本を開いて、魅了されました。
 ことの発端は、乳幼児健診に関わっている妻のひとこと
 「あのさぁ、自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ(話さないよねぇ)」
 夫である著者は、「自閉症児の独特のイントネーションや一本調子の話し方が津軽弁ばなれして聞こえるだけでは?」と反論、夫婦げんかになります。
 
 ですがそこで話は終わらないのです。
 夫である著者は調査に乗り出します。
 まずは身近な同業者、特別支援教育に関わる人たちに「自閉症津軽弁を話さない?」と尋ねます。そう思う?そんなうわさ聞く?
 そこから系統的なアンケート調査へ…青森県秋田県北の自閉症と関わる人たちの間で「自閉症津軽弁を話さない」は一般的な印象であると確認した著者は、学校の先生に協力してもらって自閉症の生徒が方言語彙(ダメだの意味の「まいね」とか)を使うかどうか調査に乗り出し…
 
 さすがに変だと思ったわたしはここで巻末の著者の経歴を確認…うわぁプロの研究者だったぁ_(:3 」∠)_
 
 そう、本文中にこう書かれています。
 「美しい研究ですね」とコメントされたことがある、と。「現場での印象を拾い上げて組織的調査を行い理論検討したことを評価する」という意味のコメントを頂いたことがあると。
 そうでしょうなあ( ;∀;)
 
 この後も冒険は続きます。
 自閉症とは、共通語とは、方言とは、話題はさらに地方を越え、人間とは、言語とは、コミュニケーションとは。
 10年に渡る研究と思索の集大成がこの本だったのです!
 研究の何たるかを、この本で知った。
 
 あと、方言が可愛いの。
 本文中に引用されてるある関西の先生のコメント
 「関西弁に比べて、共通語は平板な話し方するさかい、ASDにとって話しやすいちゃうか。関西弁はイントネーションに凹凸が大きいから難しいとちゃうんかな」
 このコメントは、イントネーションに凹凸が大きい関西弁で話されたのでしょう? この自己参照的な発言の見事さよ( ;∀;)もしかして狙って言ってるの?( ;∀;)卑怯すぎる( ;∀;)
 
 方言は魅力的ですよね…
 スゴイ本を見つけました。