『イブと7人の娘たち』--楽しいお仕事

イヴの七人の娘たち
ブライアン・サイクス著/大野晶子訳
 ↑という本を読んでいます。
 著者は高名な遺伝子学者で、この本はノンフィクションなんですけど、彼のミトコンドリアDNAの研究の苦労(?)と研究により明らかになった人類の起源をユーモラスな口調で綴っています。面白くてさーくさく読めます。


 で、ミトコンドリアDNAってやつ。
 遠い昔、高校で習ったような気もしますが…詳しいことは忘れたし、難しい説明は読み飛ばしたし!でちゃんと説明できなくてごめんなさい。


 減数分裂したり単数分裂したりする染色体とは別に、ミトコンドリアの中にもDNAがあるんだそーで、こっちは母から子へと全く同じモノが遺伝されるのだそうです。お父さんはカヤの外。
(染色体は、父と母とのがシャッフルされた上に半分だけ子どもに伝わるでしょ?)
 だから、母系でたどれば何十代前の祖先も、おんなじミトコンドリアDNAを持っているし、母系でとぎれなく繋がっている親戚同士は、おんなじミトコンドリアDNAを持っているんだそうです。
 ミトコンドリアDNAには研究に好都合な点があって、突然変異がだいたい1万年に1コくらい起きるのだそうな。AさんとBさんのミトコンドリアDNAを比べて、1か所食い違っていたら1万年ぐらい前に共通のご先祖さま(母系の)がいたことになり、2か初食い違ってたら2万年前。すごいなあミトコンドリアDNA。
 万という単位がおおざっぱすぎて目もくらむ思いですが、これで「好都合」とは遺伝学ってのもすんごい学問ですねー。

 サイクス先生は、世界中の大勢の人から血をもらってミトコンドリアDNAを取り出して比べまくったのだそうです。
 で、人類をミトコンドリアDNAの相違からいくつかのクラスター(群)に分類し、そのクラスターの最初の一人の女性の年代を推測して、アフリカで生まれた人類が世界中に広がっていった足跡を遺伝子の地図で記そうと試みています。
 自分の手でそんな研究ができたらわくわくするだろうなあ。
 そして、いつかネアンデルタール人の血統が生き残っていることを証明したいと夢見ているようで。先生が今まで得たデータでは、ネアンデルタール人は混血の子孫すら残さず完全にほろび、全ての現代人はクロマニヨン人の子孫である、という結論になっちゃうのだそうで。でもまだ解析してない民族もあるからこれからネアンデルタール人の子孫が見つかるかもヨ!なんて息巻いてます。
 めちゃくちゃ楽しそうだなあ。


 本の後半には、ヨーロッパ人の7人の先祖についての物語が載っています。
 ミトコンドリアDNAから割り出した年代と地域に考古学からの知見をつき合わせて空想した物語なんでしょうけど、原始人の暮らしがいきいきと描かれていてワクワクします。
 サイクス先生は7人の先祖がどんな女性でどんな暮らしをしていたかと毎日空想してるのでしょうか。ホントに楽しそう。


 世の中には、こんなに楽しそうな仕事もあるんですね…(愚痴)


 なんて、ちょっと妬んで軽く呪ってみましたが、先生にも色々苦労はあったはずで、ただ、何もかもユーモラスに描写してあるから楽しいばっかりに見えるのかも…さすがは紳士の国イギリスの人だ萌えー!とソフトにまとめる。