黒鉄ヒロシ『信長遊び』
- 作者: 黒鉄ヒロシ
- 出版社/メーカー: リイド社
- 発売日: 2009/01
- メディア: コミック
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黒鉄ヒロシが資料を読み込んで、信長の死の謎についてあれこれ考察するぞ。
黒鉄ヒロシと言えば、ビックコミックに連載している(今も?)『赤兵衛』、あれが分からない。
何十年も前から巻末に2色刷で載っているから、特別な作品だと思うのですが、面白さが分からない。
面白い面白くない以前に、そもそも意味が分からない。
前提の分からないパントマイムを見ている感じ?
老大家はZENの境地に至ったのに違いない、と少し意地悪に思っていました。ちっとも意味が分からなくて悔しいから。
この本を読んで、自分が『赤兵衛』を分からない理由が、少し分かりました。
黒鉄ヒロシはビジョンが見える人であり、ビジョンで自由連想をする人なのでは?
あー、と思ったのは、「信長と光秀」の章を読んだ時です。
信長の肖像画の、膝と衣の裾にズームインし、その部分が鋭い瞳とキバとに見えてきて、キバのシルエットがいつの間にか日本刀の刃紋となり、ズームアウトしてその日本刀が信長の手にあることが示され、再び刃紋にズームインし、それが扇子のへりとなります。
などと言葉で解説すると、何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…(AA略
………はっ
漫画だからコマで分割された静止画が紙の上に描かれている訳ですが、これを忠実に映像化するならば、モーフィングばっかりになるでしょう。
場面も、現代と安土桃山時代と、現実と作者脳内とを自由に行き来します。
黒鉄ヒロシが、どことも知れぬ場所で(おそらくは彼の脳内)信長と対話したり、忍者の扮装をして当時の本能寺をのぞきに行ったり、昇天する信長の霊と対話したりします。
時には首となった今川義元に好き放題しゃべらせ、刑事の扮装をした黒鉄ヒロシがルイス・フロイスを取り調べ室で問いつめたりする。
フリーダムすぎる。
老大家・黒鉄ヒロシは、漫画のお約束などからはとっくの昔に自由になっていて、紙の上で自在に遊ぶのでしょう。
仙人のように。
もしも機会がありましたら、「お市の心」だけでも読んで頂きたいと思います。
文字と映像と言葉(音)が渾然一体となるラストに、黒鉄ヒロシの作風の風変わりさが凝縮されていると思いました。
(「お市の心」は、「言葉遊び」と判定されるか「オヤジギャグ」と判定されるかスレスレの危険な立ち上がりも印象深いと思います)