『砂の器』
レッサー映画狂上司のイチオシ映画だそうです。
1974年制作の映画版を、LDで借りて見ました。
LDはひっくり返さないといけないのですね。143分の映画が、LDで1枚半でした。調べたら、LDは片面に60分しか入らないみたいです。
映画の途中でディスクを裏返すのはたいへん興がそがれることです。うちの機械が古いためでしょうか、一面終わった時の音も大きくて、ギョッとさせられます。熱中して見ているとダメージ倍増です。DVDって、とても優れたメディアなんだなあと思いました。
松本清張作品の映像化ということで、また電車の乗り継ぎの話とか関係者の生年月日などをこと細かに言うので、推理に関係あるのかと思っていっしょうけんめいメモしながら観ました。けどあんまり関係なかった。
推理に飛躍があるように思いました。原作だと緻密に埋めてあるのかなあ。
正直、ちょっと退屈かも、と思って観ていました。
わたしが間違っていました(土下座)
後半、回想シーンがはじまってからはなにもかもどうでも良くなりました。
悲しい映画で子役がすごくいいってのは、反則だと思います。
号泣です。
構成も反則だと思います。あれとあれとあれが重なっちゃうなんて、超反則だと思います。泣けと言わんばかりに。
犯人の動機は、この映画でははっきりとは説明されていないように感じました。
丹波哲郎刑事の推測だけ?
が、天才子役の表情を思い返すと、感情的に納得してしまいそうになります。理屈抜きで。それぐらいの迫力のある子役さんでした。
つーか基本的に自分は悪役スキーで、親切(のつもり)で正義とか正論とか押しつけてくる人には脊髄反射で殺意を憶えるたちなので、余計にそう思ったのかもー。
てゆうかそう簡単に善悪とか損得とか理屈とかでは割り切れないものってあると思います。そもそも緒形拳のお巡りさんは性急すぎだと思いました。また、割り切れないものを言葉で説明できなくて黙りこむしかない子供*1の目が…目が…この子役の人、末恐ろしいっすよ。
あと、この物語の背景に、ハンセン氏病とらい予防法があります。
緒形拳のお巡りさんは、らい予防法(の前身の法律)に従って「正しく」対応したんだと思いますが、現在から見るとその正しさの根拠が怪しく見える上、お役所は一通り嫌いなひねくれ者(わたし)の厚生労働省への憤りがまぜこぜになってしまって、いっそう、子役といっしょに憤ってしまう、みたいな。
推理がどうこうってよりも、感情の方をむちゃくちゃに揺さぶられる映画だと思いました。
この映画では、1974年ごろの田舎の風景をたくさん見ることができます。
田舎の駅がオンボロで超かわいいの。ホームとかほとんど野ざらしなの。道路が舗装されてなかったり。田舎の警察署もレトロでレトロでセキュリティが心配なぐらいで。署長さんもいい人なんだけど無能そうな感じで。わー。
小松左京が『日本沈没』を発表したのが1973年だそうです。
つまり、当時の小松左京の頭の中では、ここに映っている日本の風景が沈んでいた訳だ。(強引ですかな)
そんで、『日本沈没』の執筆の動機は「高度経済成長で浮かれていた人々をもう一度、国を失うような危機に直面させ、日本人とは何かを問いたかった」(8月1日読売新聞)というお言葉。
『砂の器』で見る当時のド田舎の風景は、ほんとうにイノセントに見えてしまって、虚栄の報いを受けるにふさわしいとは見えず、小松左京の話とイメージがつながんないなーと思いました。
いえ、無理につなげなくてもいいのですが。
*1:大人になっても言葉で説明できなかったようです?