『へうげもの』
- 作者: 山田芳裕
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/12/22
- メディア: コミック
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独特の濃い画風で、太い線で丹念に描かれていて、たまに人物が背景に埋まっています。(後ろの方になると背景の線が細くなったように見えるかも)
わたしにとっては三国志大戦のRキョチョ&Rテンイを描いた人という印象の方が強くて、過去作品は読んだことはなく、「へうげもの」はモーニングちらちら見ておりましたが、笑う漫画なんだかそうでないのかしばらく判別がつきませんでした。
だって連載時アオリが笑わせようとしているように…見えたし…?
コミックスを読んでみて、そんなにゲラゲラ笑う感じではないのかなあ、とも思ったのですが、裏表紙がカン高い声で笑う信長だし、サブタイトルが歌のタイトルから引用だし、巻末の登場人物紹介とか、やっぱり笑わせようとしてるんじゃ…ない…?
↓一例(主人公の古田左介の紹介です)
1544(天文13)年、美濃国生まれ。織田信長の使い番として戦場を駆けめぐる。茨城城主・中川清秀の妹・おせんを娶り、山城国上久世荘の代官となる。荒木村重の謀反に際し、摂津攻めで活躍。明智光秀の丹後・丹波平定にも従軍。幼い頃から父に茶の手ほどきを受け、信長の茶頭・千宗易(利休)の門人に。好きな色はグリーン&パーシモン。
左介も、おしゃれふんどしで気合い入れてる場面の絵だし、最後の一行はオチと違いますか。違いますか。
だけど、左介、好きだなあ。
初登場時34歳。
がんばってるんだけど武人としてはイマイチぱっとしなくて。
それは実力のせいであり、要領の悪さのせいであり、趣味の物欲に引きずられる故でもあり。
そもそもどう見ても大器じゃないし。いっつもテンパってるし。
彼の物欲ゆえの失敗は可笑しく、テンパっている姿も可笑しく、悔しがったり落ち込んだりする姿もまた可笑しく、しかしやがてほろりと悲しくなります。
歴史に名を残した大人物との格の違いを感じた時も、可笑しく、悲しい。
そう、凡人の自分を見ているようで。
スターにも大先生にもなれっこないといつの間にか知ってしまった自分を見ているようで。
だから左介がんばれ。
もっとがんばれ。奥さんを悲しませるな。
思わず応援したくなるのです。
この漫画がモーニングに連載されており、サブタイトルが70年代の洋楽から多くを採られているのは、これは勘ですが、計算尽くではなくて、作者から同世代へのエールみたいに思える。*1
だから左介がんばれ。
秀吉が、根性の座った策士として描かれています。
「ひょうきんな猿」の顔は仮面のようです。
主人公の左介が、凡人のわたしが共感するキャラなのに対し、凡人のわたしがヒーローとして憧れる人物は、この漫画では秀吉です。
信長だという人もいるかも知れませんが、わたしは秀吉だな。信長は凄すぎて、もう歴史的背景みたいに思っちゃう。
これから秀吉がどう歴史を動かすのか、左介が巻き込まれて不幸にならないのか、とても続きが気になります。
うわーん、二巻が売ってないよう。
*1:作者氏は1968年生まれだそうです。あっ、わたしは対象年齢の下限にぎりぎり入らないぐらいですよ?