『霊の柩』--レビューになってなくてスミマセン
- 作者: 高橋克彦
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2001/12/10
- メディア: 新書
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読みもせず、「高橋克彦は宗教に逝っちゃった」とか決めつけちゃってゴメンナサイ。
宗教臭はほどんどない、めっちゃ楽しいエンタメ作品でした。大正浪漫、古き良き日本への郷愁、チャイニーズマフィアのボスの娘さんとゆく船の旅、アトランティス談義、ロンドンの心霊スポット訪問、などなどオモシロネタてんこ盛りで、移動時間を楽しく過ごせました。残り5%を切ってなおドタバタあるとは思いませんでした。しっぽまでアンコみちみちのタイヤキみたいだ。
以前にもくどくどと紹介しましたが、この本は氏が代表作と自負する?「柩」シリーズの第三部にあたります。
新書版・ハードカバー版で『竜の柩』→『新・竜の柩』→『霊の柩』になります。
文庫版では無印・新の『竜の柩』が1タイトル全4巻にまとめられています。(混ぜるな危険、って気もしますが)
主要登場人物は共通ですが舞台が異なっていて、うーん、たとえるなら、定食屋のオススメメニューを3日連続で頼んだら和食・洋食・エスニックで、コックはオヤジさん一人のハズだよなあと厨房をのぞき込んでしまう、そんな感じ?(大げさかな)
3作のつながり具合も絶妙だと思います。
それぞれ1タイトルでキレイにまとまっていて、作者も書ききった!と思って筆を置いたと想像されます。
ですが、前作ラストの高揚感に深い味わいをもたらした主人公の悲壮な決意、重要サブキャラの諦念、これを十分に踏まえて次編がはじまり、最後にしっかり救済…つかぶち壊し…?されてて、あんまり泣かせるなよぅ、みたいな。
で。
高橋氏は感激屋だと思う(会ったことないけど)
友情に感激し、勇気に感激し、歴史の重みに感激し、すぐに涙腺がゆるむ。そんな熱いモノが作品にたぎっていて読んでて心地良いのです。
それから、この人の書く「チームの居心地よさ」感はちょっと他に類を見ない。と思います。『霊の柩』は(野郎ばっかり)4人パーティ+αで物語が進行しますが、この4人の相互信頼感はちょっとヤバイぐらいだぞ(腐女子発言)
チームの引率者?主人公の九鬼虹人(くき・こうじん)は、いらん知識に満ちた口達者な男です。
コージン「こう考えていくと神=宇宙人という結論以外はありえないっ」
他の3人+α「な、なんだってー!?」
が基本路線だと思っていればだいたい間違いありません。
加えて生活力旺盛な超マイペース青年&おっとり美少年系カラテカのボケツッコミユニットも装備、超マイペース青年の超マイペース発言に全員が笑い転げながら世界を半周、仲間割れ裏切り等の鬱要素はいっさい使用しておりません。てな感じ。
勝手な惚れ込みでしょうけれど、チームの和気藹々さに作者氏の人柄の良さが透けて見えるようで、柩シリーズはこのまま変わらないでいて欲しいと思います。
あと、可愛げあるオッサンがたまらぬのヨ(腐女子発言その2)*1
『竜の柩』では南波さん(40)が、『霊の柩』では鹿角さん(40代?)がいじられまくっていて楽しかったです。ハイ。
南波さんは、自衛官・SP上がりの、さる財界大物の秘書兼私兵のトップです。戦争も人殺しもガンガンしてたような感じだけど荒んでなくて、頼りがいのあるいい男です。が、トンデモ伝奇系には免疫が無かったのでしょう、モヘンジョ・ダロとかハラッパーに連れてかれて現地でトンデモ系主人公コージンのトンデモ屁理屈をたっぷり聞かされて、
コージン「やっぱり神=宇宙人としかっ」
南波さん「な、なんだってー!」
と染まりまくっていく姿がとてもほほえましかったです。なにしろコージンは漢和辞典を引いても神=宇宙人説の証拠を見つけちゃう妄想力たくましい人ですから、真面目な軍人さんの南波さんが太刀打ちできる訳がなかったのだ。南波さんは『霊の柩』でも重度のコージン中毒ぶりを発揮していてほほえましかった。
そして鹿角さんは。
有能美人秘書へのカッコつけーでえっちな仕打ち(笑)、下克上の精神、主人公への秘かな敬意、強さの中にもろさを持ったところ、と『竜の柩』では正統派カッコイイ系ラスボスでわたしは大好きだったんですが、すっかり素顔はお茶目系のイイ人になっておりました。
柩シリーズ初代ラスボスの自負があるのか、それとも意地っ張りなのか、彼はコージンベタ惚れのくせに肝心な所で単独行動したがる傾向があります。そのくせ、コージンたちを懐かしんでずーっと待ってたりとか。こぉの寂しがりやさんめ!
突っ張って孤高を選んだくせに、コージンたちが行ってからやっぱり寂しくなっちゃってひとり泣く、というオイシイことをしている現場を、コージンたちに踏み込まれちゃった鹿角さんは、最高に萌えると思いました。
ごちそうさまでした。
最後に、高橋氏の言葉を引用します。(別の作品からですが)
…私は悪役がほんの一瞬垣間見せる恥じらいというものが好きで、それがダンディズムだと思っている。
高橋克彦『緋い記憶』文庫本のためのあとがき
文中の悪役=半分ご自分のことらしいのですが、高橋氏はとてもよく分かってると思ったものです。個人的にはダンディズム→萌えポインツだと思います。そう言い換えて作者氏に捧げたいっ(ファンに刺されそうだが)
柩シリーズはこれで完結とのことですが、分かってる高橋氏の書く第四部がすっごく読みたい。
以前、高橋克彦と柩シリーズ、『緋い記憶』についてブツブツ言った日。
id:wang2zhonghua:20050326#p3
*1:白状しますと、『竜の柩』まで再読できて、出張には未読の『霊の柩』をひっつかんで出かけました。故に『新・竜の柩』はイイ塩梅に記憶の彼方モードです。これから読みたいです。