延滞〜

 はっと気がついたら、図書館の本の返却期限が過ぎていた。はわわ。
 筒井康隆の本を借りていました。
 高校時代にコレを読み通したぜ!と言い切れるのは『定本ラヴクラフト全集』それから『筒井康隆全集』だ。と心のより所にしていました。なんの心のより所か分かりませんが。前者は、ほとんど記憶に残っていなかったことが先頃証明されて、人生観変わりました。ヒトの記憶はまったくアテにならない、と。
 恥ずかしい自分の体験を一般化して恥ずかしさを減らそうとするのはよせ。って感じですが。


 前回返却しちゃったので、どの本に載っていたのか覚えていないのですが*1筒井康隆の初期(…ですよね?)の作品で「わが良き狼(ウルフ)」って短編があるのです。再読して、悪役好きのルーツの一端はこの辺にあるのかなあ、なんてボロボロ泣きながら思ったりとか。ごく短い作品ですので、機会がありましたら、ぜひ。


 今日、延滞しているのは、筒井康隆のコレです↓

残像に口紅を (中公文庫)

残像に口紅を (中公文庫)

 わたしの師匠が筒井康隆が好きなのです。
 なかでもコレが好きだ、と言うのです。
 文字が半分以上消え表現が不自由になってはじめて、今まで語ることのできなかった父親への怒りが表現されるところがおもしろいと言うのです。
 師匠はフロイトも好きで、自由連想っつの?抑圧っつの?自由に語って良いと言われても何か見えない制限がかかって自由に語れないテーマがあって、とかいうのが好きらしいです。なにかねじれた話が好きみたいですね。
 わたしは、こんなことを思いつき、思いつくだけじゃなくて本当に文字がゼロになるまで小説を書き続ける筒井康隆は天才だと思います。*2
 そして、師匠も筒井康隆と同じく、父親への怒りを心の奥に隠しているのかなあ、と思ったりしました。


筒井康隆全集〈3〉馬の首風雲録.ベトナム観光公社
 『馬の首風雲録』を師匠が好きだと言うので。
 筒井康隆は、戦争や死や病気や老いを笑いのタネにする人で、それも心が温かくなる気持ちのいい笑いじゃなくて、敵意とか自嘲とか不安とか、何か嫌〜なモノが混じった、ケケケケケとでも表現するようなヒステリックな笑いの人で、だから嫌う人はとことん嫌うし、嫌われたら戦っちゃうもんだから余計に嫌われて。そんな風に思っていました。かつてその孤高っぷり?がたまらなく格好良いと思った。
 だけど、今読んで、辛辣さとヒステリックさの合間からほのかに香る、真善美への希求が、なにかこう、いじましい?ような?まっとうに美しいもの正しいものを賛美するのが恥ずかしいから、茶化しちゃう?みたいな?
 言葉にすると嘘っぽくなってしまうモノに対してこのような態度を取る人を、好ましく思います。正義正義大義とか臆面もなく大声で言う人たちに比べたら、ずっとずっと。


 あと、ムードに流されるな。自分の意見を死守しろ。とかそういう大事なことを作品だけじゃなく生き方全体で言ってるのかも知れないなあ。


筒井康隆全集 (10) 家 脱走と追跡のサンバ
 『脱走と追跡のサンバ』が名作だと師匠が言うので。
 時間切れー(がくり)

*1:ほんとうに、ヒトの記憶はアテにならないものですね

*2:でも、ストーリーはあんまりおもしろくなかったような気がします。各章の動物が文字で出来ている挿絵は面白くて大好きです。そして、表紙が舟越桂だったかも知れない。