『トロイ』 --お兄ちゃんはつらいよ

 最初に謝っちゃいます。面白かったです。ハイ。
 映画館からの帰り道「中途半端に悲劇の愛を強調しないで、金と人海戦術に任せた戦争映画に徹すればいいのに」とぼやく羽目になるだろうと思いこんでいたのですが、それは私の偏見でした。ごめんなさい。
 おっさんたちの野望・策謀・権力欲と、たくましい筋肉(そして野郎のミニスカ)が主張しまくる男臭〜い映画でした。ロマンス部分も必要最小限で、真剣に戦争(の情景を再現しようと)してたのはとても好感が持てました。
 聞くところによりますと、「ハリウッド映画」とはすなわち巨額の制作費をかけて凝った衣装に大がかりなセット、膨大なエキストラを動員しての豪華絢爛な大スペクタクル映画。だった時代があったそうで。こんな映画が量産されてたのかなあ。

 ブラピ様は最近は見るたびに顔のシャープさが失われて行くようで、やきもきしていたのですが……この映画じゃ首から下がすごかったヨ…。加えて立ち回りの時のキレといい、確かに、肉弾戦の時代の勇者に見えました。この映画のために体を作り込んで撮影に臨んだ役者根性に脱帽です。*1

 いやそれよりもヘクトルですよ!
 電波父とバカ弟(レゴラスの人)を抱えたトロイの第一王子ヘクトルの奮闘っぷりは、涙なしには見られませんでした。
 ヘクトルは勇敢で軍指揮官としても有能で、高潔で優しくて、国をしょってる自覚もありすぎるぐらいあって、常識人で先の見通しも一番確かで、登場人物の中ではもっとも王者の器という印象を受けました。
 嗚呼、なのに弟がバカだったばかりに。
 えーと、確かモトの話だとギリシア神話の神様たちが色々介入してたと思うのですが、彼らの登場はいっさいナシでした。神話抜きで作ると、ホントどうしようもない戦争ですね…。講和条約を結びに行って相手国*2の妃を略奪して来ちゃって…そりゃあ戦争にもなるだろうよ……………。
 未曾有の国難を招いておいて中盤ちょっとすぎまで自覚に乏しかったバカ弟のバカっぷりはチョット半端でなかったです。ギリシア軍が殺到したら「二人で逃げよう」で、王妃を賭けて一騎打ちだ!と根性見せたかと思ったら負けそうになるとぶるっちゃうし。中つ国で見せたガッツはいったいどうしたんだ!(いいがかり)
 そんなバカ弟なのに、ヘクトルは見捨てることなく懸命にフォローしようとしていたのが、いっそう涙を誘いました。一騎打ちの後、バカ弟が正気づいたのがせめてもの救いです。


教訓:親は選べない。弟も選べない。

*1:もしかしたら、清潔感のある美青年の自分よりも、野獣のような男の中の男的な自分にうっとりする人だったりするのかなあ、とちょっと妄想が広がってしまいました。

*2:軍事国家で、しかも主戦派は戦争の口実を探していた訳で。危険危険危険。普通なら恋愛モードになりようがない状況だと思うのですが。