『万物理論』
- 作者: グレッグ・イーガン,山岸真
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2004/10/28
- メディア: 文庫
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冒頭が鬱未来だったのでどうしようかと思ったのですが、全ての人がこの宇宙にかけがえのないものとして寿がれる、お正月にふさわしい壮大でおめでたい話でした。面白かったです。物理理論?のあたりはちょっと目が滑りましたが。
2055年、すべての自然法則を包み込む単一の理論"万物理論"が完成する直前のてんやわんやを、傷ついたジャーナリストの自分探しとからめて語られる話…です。
この著者の作品の面白さは「訳者あとがき」にコンパクトに説明してありました。
イーガン作品の大半が、なんらかのかたちでアイデンティティをあつかっているのは、よく知られているところだ。それは本書も例外ではない。
テクノロジーの力で人間の定義をさまざまなレベルでゆさぶる、『ジャンクDNA』の四つの事例。全編にわたって繰りかえされる、性別や国籍によって「こう生きねばならない/考えねばならないetc」と"自分のありよう"を定義される--自分のことを他人から権威者ヅラして語られる--ことの拒絶。その種の強制から自由なステートレスの社会。物理的な最深レベルで自分を定義づけるものとしての万物理論。
読んでいる時のワクワクが思い出されます。奇跡のバランスの島・ステートレスに行ってみたい。
しかし、個人的にそれ以上にウケた所があって…、ネタバレなので隠します。
この宇宙は、理解されるのを待っている。
すべての星々と、生命と、文明は、その目的のため"だけ"に用意されていたのだとしたら。
賢者が宇宙の真の姿を理解した瞬間に、この宇宙が終わるとしたら。
あした、ひとりの賢者が真理に到達するとしたら。
あした、世界が終わるとしたら。
(秘密教団による仄めかし。禁断の知識に手を出したがゆえの死。錯綜する巨大複合企業と国家の思惑。世界中に広がる宇宙終焉の予兆)
賢者が倒れても、真理という名の呪いを止めることはできない。それを記した論文を読んだ者は……慈悲もなく恩寵もなく、ただ冷徹な物理的法則だけが宇宙を支配しているという真実に耐えられず………発狂するって何だー( ゚∀゚)・∵ブハッ!!
後半に、ある説が出てきてから、この世の終わりと救済を扱ったファンタジーみたいに見えてきて、真実を知ると発狂する?話のあたりは、またしても思わぬ所でクトゥルー神話と再会するのかと、いやまさか、そんな、ありえない、とドキドキしながら楽しく読みました。激しく間違った楽しみ方だとは思いますが。楽しかった。
ただ、思ったのですが。
「真実の書」、じゃない万物理論の論文を理解して呪い?を発動させるにはある程度以上の知能、いや数学の素養が必要な気がします。大学受験レベルの数学じゃ確実に無理だと思います。わたしが読んだなら、理解できなくてセーフだったかもなあ、と思いました。
次は激しく難解だと評判のディアスポラ逝ってみたいと思います。