谷甲州『終わりなき索敵』

 航空宇宙軍史シリーズに新作が出ました!

  ひまを見つけて、旧作を少しずつ読み返しています。

 「終わりなき索敵」(93)、いろいろいらぬ知識をつけた後に再読すると、連想が広がって面白いですね。例えばマヤとシマザキのエピソードは「エヴァンゲリオンAir/まごころを、君に」(97)のパクリではないのか?とか。

 スピ系で言う?トータルセルフとかI/Thereとか言うものを連想するようなしないような?全体に臨死体験のようでもある。違うのは定番?の「無条件の愛」が出てこないあたりかな?

 てゆうか「索敵」のあれは、臨死体験なんですよね?

 谷甲州の作品は「好きになれないやつ」が出てくるのですごい。てか索敵は9割そうかも。昨今のエンタメは敵将すらなんか憎めない感じに描写することが多いのにね。軟弱だよね!って思っちゃう。

 主人公の一人、ロックウッドからして、そうとう嫌なヤツですよね。艦長の求心力を高めるために計算尽くでみんなの前で副長のメンツ潰すとか…主人公補正と、読者としてこうなった過去のトラウマを知ってるから誤魔化されがちですが…

 だいたいこの人、人から好かれようとか嫌われたくないとか1ミリも思ってないよね。すごいよね。何年も同じメンバーで顔を突き合わせてる環境で。私ならストレスで死ぬわぁ。

 ロックウッドの仲良しって、鳥と作業体Kぐらいじゃないかしら。それも「鳥」の方はコズミックホラー的な、正体不明の、本当に鳥なのかも怪しいヤツで。

 

 いちばん怖い場面は「あなたは300年ちかくの間予備役将校として 冷 凍 保 存されていました」だと思います。こんな予備役は嫌だ(´;ω;`)

 榛原はどうして気さくにロックウッドに話しかけるのかなあ? 親しみを持つような接点ないのに。ロックウッドが昔かわいがってた犬に似てて親しみを感じるとか? うーん、榛原ちょっと空気読めなくて誰にでもフランク説とか…

 

 夢を見るなら、勇者ダムダリの生身で衛星軌道上の宇宙戦艦を撃墜する夢が見たかった。寝る前に読んでたので。何度読んでもあれはすごいよね。目測で命中するものなのか。爆散円が十分に大きければけっこう行けるものなのか。私の中ではマスターアジアと同じ枠にいる感じだ。

 

 おかしいよって言ってくれるまどかみたいな人がいない組織。最大効率で取り組んでも上手くいかないなら、前提がおかしいよって言ってくれる人がいない組織。

 あと、一任務数百年とかかかっちゃうのも良くないかな… 一人のトップが組織の「顔」として活躍できるのは、せいぜい10〜20年のスパンだよねえ。

 

いなか者、読書会へ行く 谷甲州「コロンビア・ゼロ」

 一目で分かることは、案外と本には書いてないものだ。

 僻地で、一人で本を読みながら「こんな風だろうか」と想像しながらやっていると、つまらないことを勘違いしていることがある。
 例えば、私は10年以上Gペンの使い方を勘違いしていた。アシスタントにでも行って人がGペンを使っているところを見れば、一目で間違いに気づいたことだろうに。
 
 思えば、かの谷甲州だって、処女作を原稿用紙に横書きで応募したのではなかったか。規定違反である。
 若き日に外国でコツコツ小説を書いていたので、原稿用紙を縦書きで使われているところを見たことがなかったのかもしれない。
 
 というわけで、読書会、なのです。
 読書会という言葉は知っていたが、参加したことはない。見たこともない。
 と、思っていたが、実例をひとつだけ知っていた。
 使われる本は、ただ一冊の、大文字で綴られる「本」で…付け加えるならば田舎の大学ではしばしば宗教の勧誘の隠れ蓑だった。くわばらくわばらである。
 
 それが違う読書会だとは分かっている。
 遠くの空のもとに、これとは違う本当の読書会があると信じていた。
  うっすらと「こんな風じゃないだろうか?」と想像するが、間違っていると恥ずかしいので黙っていた。親切な人が、メーリングリストに大まかな流れを投稿してくれたので、助かった。でも油断はならない。
 
 
 私は、読書会の実像を探るために新宿に飛んだ。
 新宿は行くたびに構造が違うような気がする。それで道に迷ったのは別の話、別の時に語ろう。
 
 読書会テキストは、谷甲州「コロンビア・ゼロ」
 日本SF大賞受賞作である。
 何年もみんなが待っていた、第二次外惑星動乱、開幕ですよ!
 開戦準備だけで何年もかかるのではないかというおおかたの予想に反して、ちゃんと開戦してますよ!みんな!読もう!
 
 
 結論から言うと読書会はたいへん楽しかったです。
 べつに怪しくもなかった。あたりまえか。
 幹事さんが骨を折ってくれて次々とコーヒーとサンドイッチが届き、快適な環境で、本のことだけしゃべってるなんて、パラダイスかと思いました。
 わぁわぁと活発な意見交換ができて楽しかったです。
 誰もが気になっていた部分と、あなたはそこが気になってしょうがないんですね…(汗)という部分があって面白いですね。
 
 それで気がついたことがあります。
 田舎で一人で本を読んで、自分なりにいろいろと考えたりしていましたが…決定的に足りないものがあったんです。
 喋らないんです。声に出して言う機会がないのです。
 読書会でわぁわぁと意見を言って、声を上げて笑って、ほんとうに声に出してなかったなーと思いました。
 声に出して言いたい日本語は!
 第二次外惑星動乱!そして艦隊決戦!!
 
 
 ぴったりのキャッチコピーが成立する瞬間に立ち会えたのも面白かった。
 
 そう、「谷甲州朝チュン説」
 
 「この感じ…なんて表現したらいいんだろう?」と思っていたものに、短くてピッタリくる名前がつけられるのは、なんて言ったらいいんだろう?人間はこうやって思考の範囲を広げてきたんだろうなって思う。
 かつて「おたく」という言葉が世に広く知られて、世の中が「おたく」という性格類型あるいはライフスタイルを知覚して話題にできるようになったように。
 名付けられてはじめて、輪郭がはっきりして姿が見えるようになるものがあると思う。名付けられてはじめて、議題にできるものが。
 
 そう、谷甲州の作風は、「朝チュン
 ストンと胸に落ちました。
 これは声に出して言いたい。声を大にして言いたい。
 みんなで言いましょう!谷甲州朝チュン!」
 

 最後に、[本当は読書会に参加したかった]中村さん(東北在住)のメールを引用します。

 読書会で「第二次外惑星動乱の着地点はどこなんだろうね?」って話になったのです。帰ってきてその話をメールで中村さんにしたら、中村さんが予想をメールに書いてくれたのでした。

 中村さんも参加したら面白かったでしょうね。

 

 第二次外惑星動乱の着地点?つきつめると、どっちが勝つかってことでしょうが、やってみないと、わかりませんね。

 一応粗筋は、ガス惑星降下作戦⇒空母機動部隊の激突⇒通商破壊作戦⇒?

 という感じですか。全ては4個のガス惑星のうち幾つが外連に占領されるかにかかると思います。4個すべてで成功すれば外連の勝ちでしょうね。占領に失敗したガス惑星の地球へのヘリウム供給ラインが生命線となるため、外連の攻撃はここに集中することになります。一方航空宇宙軍は、外惑星連合経済圏の破壊のため外惑星間の通商ラインを攻撃します。いずれにせよ制宙権の確保のために空母機動部隊が雌雄を決することになります。こんなところですかね。

 

 空母機動部隊、これも声に出して言いたい日本語だと思います。

 声に出したい… そのためには続編が本になって、読書会がまた開かれる日を…

 

 

 

萩尾望都『マージナル』再読

 

マージナル(1) (小学館文庫)

マージナル(1) (小学館文庫)

 

 

水上悟志『スピリット・サークル』6巻(完結)

 

 

 

 

 水上悟志の『スピリット・サークル』が完結したので。

艦これACで加賀さんを引いたので

柳田邦男の本を開いて、ミッドウェイが6月初旬であったことを知るなど。

 

Battleship Girl -鋼鉄少女- 3巻 (ガムコミックスプラス)

Battleship Girl -鋼鉄少女- 3巻 (ガムコミックスプラス)

 

 

『カルバニア物語』

 

カルバニア物語(1) (Chara COMICS)

カルバニア物語(1) (Chara COMICS)

 

 電子書籍で手に入ったので読み返しています。

 ひっこしの時にコミックスを手放してしまって、後悔してたんだ…

 昔、雑誌で読んでました。ン十年ぶりに読み返してもおもしろーい。

 TONO先生の絵は時代を超えていると思う。流行に左右されない、TONO先生だけの絵。近・現代の機械系や建築(ビルとか)など描けないものがあると言っていますが、私は信じませんよ? どんなものでもぜったい「TONO絵」に落とし込んでくると思う。

 どのページも、ページ全体がイラストとして成立してるのもすごい。

 

 ドレスいっぱいで甘くて、女王様は可愛くて巨乳。

 主人公(女子)は格好良くて強い。

 その中にちょっぴり混じってくる、政治や反乱や大人の都合やらなんやかやのビターな味わいがたまらない。

 読み返してビックリしたのは、エキューがあんまり殺人に抵抗がない(ように見える?)ことかな…

 子供の私の脳には、受け入れられない要素だったようです。

マイク・レズニック「キリンヤガ」

 当時、すっごく話題になっていた本です。

 SFマガジンに載った短編「空にふれた少女」が印象的で、誰もが感想を言っていたかも。

 急に読み返したくなって、お取り寄せをしたのでした。

 読み返して「プロローグ もうしぶんのない朝を、ジャッカルとともに」の、父と息子の会話の噛み合わなさっぷりの描写に感心しました。巧い作家さんだったんだなー。