『サンダイバー』

サンダイバー (ハヤカワ文庫SF)

サンダイバー (ハヤカワ文庫SF)

 時は未来。
 人類が、宇宙をまたにかけ銀河列強どもを向こうに回して派手に立ち回る燃えるSFシリーズです。と書くと言いすぎかしら。な「知性化戦争」シリーズの本です。
 作中年代順だと『サンダイバー』→『スタータイド・ライジング』&『知性化戦争』です。
 出版年は1980年で翻訳が出たのが1986年です。
 ナウなヤング(死語)が夢中なup-to-dateな作品に向かうはずが、また大昔のSFを読んじゃったよーウワァァァァァァヽ(`Д´)ノァァァァァァン!
 SF読んでいると、自分が生まれるずっと前の作品が今でも人口に膾炙されててフツーに流通していて驚かされます。(この本には勝っていますが)
 そんなの当たり前っちゃ当たり前なんですけれども、つーか、何と比較してそんなに驚いたんだろうと自問自答して、漫画かも知れないと思いました。
 で。
 ETと接触してからまだ日が浅く、生きている人間の半数がファーストコンタクト以前を記憶している時代。
 ETのもたらした驚異の技術と、人類の技術のハイブリット探査船を太陽に送り込む「サンダイバー計画」--

 (…)太陽への降下は、人類の健全な知的好奇心を象徴するものであり、銀河の古参種族たちに対して人類の独自性を主張し、プライドと虚栄心を秘かに満足させる愉快な冒険なのである。
    大野万紀 『サンダイバー』解説より

 しかし、計画を揺るがす悲惨な事故が--それは事故か殺人か!?
 その裏に隠された星間規模の陰謀を二重人格の探偵が鮮やかに解決する!!
 クライマックスには太陽に向かって落下する探査船の中でのテロリストとの戦い(タイムリミットも完備)とかもあってがっつんがっつんに盛り上がるよ!
 とかそんな話です。とか言っちゃっていいのかしら。


 太陽探査の描写は、最新の知見をふんだんに取り入れたきわめてエキサイティングなものらしいですが、わたしに知識がないので論評不能です。ごめんなさい。
 他の作品がスコーンと痛快に面白いのに比して、なにかと理屈っぽいのはデビュー作だからでしょうか。
 よく考えると、ここで展開されているのは架空の未来の話で。つか起こる確率が限りなくゼロに近いif話で。
 科学でも武力でも太刀打ちできないET文明と出会ったら人間(社会)はどう反応するかとか外交政策はどうしようとか、明治維新やネイティブアメリカンの歴史と比較して一生懸命考察してもどうせ架空だから一文の得にもならんと言うか、でも地道に理屈で想像したのを読むのが面白いというか感心すると言うか、いやもしかしたら透視(幻視?)してるんだろうか、とかとか。
 こういうのが面白いって感覚、なんなんでしょうね。
 一文の得にもならんのにね。
 あと、作者が日本ビイキで急に小林一茶とか出てきちゃうところも愛らしいと思います?
 シリーズをより深く楽しむには必読の一冊だと思いますが、愛らしいイルカとチンプの出番が少ないので感情論で減点一、はじめてシリーズを手にする方には、『スタータイド・ライジング』『知性化戦争』を先に読んだ方が入りやすいんじゃないかなあ、とか言ってみる。
 サッパリまとまってませんが、こんな所で。


P.S.
 ジャーナリストが関係しているアレが「序章」につながるんでしょうか。驚いた。