『ポオ蒐集家』
- 作者: 仁賀克雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/02
- メディア: 文庫
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ブロックの作品は、アンソロジーのタイトルにもなっている「ポオ蒐集家」です。
一読して、これはラヴクラフト系列作品ではないか!?と飛び上がりました。邪神とネクロノミコンこそ登場しませんが、いくつかの親しみ深い魔導書の名前が挙げられており、あるラヴクラフトの長編作品を彷彿させると思ったのでした!
ところが、解説には
ポオの「アッシャー家の崩壊」のパロディというより同作品へのオマージュである。冒頭と結末はポオの文章をそのまま借用している。アッシャーの代わりに、恐るべきポオ・コレクターのキャニング一族によるグロテスクな所業がブロック調で描かれている。
とポオとの関連ではじまり、最後までラヴクラフトのラの字もない。どういうことだ!と再び飛び上がりました。
いやしかし。
ラヴクラフトから読み始めたわたしの中では、ロバート・ブロックは「ラヴクラフトのユリアン・ミンツ」なのですが…クトゥルー神話が知られる前は、『サイコ』のブロックと言ったら生前のラヴクラフトをはるかに超える名声を得ていたのではなかったか。
むしろ世間さま一般では「ラヴクラフトって誰?」で「ブロックって若い頃そんな作品も書いていたの?」って感じだったりとか。
ロバート・ブロックは、年譜によると14〜5歳でラヴクラフトと文通をはじめ、17歳で商業誌デビュー、ラブクラフトが死んだ年には20歳でした。
そしてブロックが亡くなったのは1994年、享年77歳でした。考えてみると、20歳以降の作家としてのキャリアをラヴクラフト抜きでやっていた訳です。つーかラヴ先生より長い作家生活を送り、作家としての収入で家族をちゃんと養っていたのでは。「ラヴクラフトのユリアン・ミンツ」なんて決めつけてゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ。
「ポオ蒐集家」が発表されたのは51年、ブロック34歳の頃でしょうか。
冷静に考えるなら、「ポオ蒐集家」のアイディアがラヴクラフト作品に似てると主張するのは、えーと、「スライムが出るのはドラクエのぱくり」と言い張るようなものかも知れません。(変な例えでスミマセン)
ああ、だがしかし。
ラウンスロット・キャニング=ブロック、と勝手に等号でつなげて、ポオをラヴクラフトに置き換えて読むと。
我が身を死んだ作家と重ね合わせ、それでは足りず死んだ作家のよみがえりを強く望み、しかし今では彼が這い出てくるのを強く恐れる男の姿は、師匠を懐かしく思いつつも、作家としてオリジナルティを出さなきゃ!と焦る若い作家の姿に見えないでもない。
なーんて根も葉もない妄想ですけど。ごちそうさまでした。
ダーレスの『淋しい場所』はすごく良かったです。
最後のとってつけたような?ホラー化は気に入らなかったのですが、前半の親友と二人だけでファンタジーを共有する部分はすごく良かったです。子供だけが感じる恐怖というネタも郷愁をそそりますし、親友との打ち明け話と秘密の共有は、何か遠い日の甘美な思い出を刺激して胸がきゅんきゅん言います。
仲間とやる怪談や肝試しは、怖いけど楽しいですよね。いっしょに怖がれば連帯が深まるし。ラヴクラフトを中心にみんなでネタを重ねて盛り上がったクトゥルー神話は、怖いけど楽しいものだったのでしょうか。
なんでも神話につなげちゃってスミマセン。
半分ぐらいしか読んでいませんが、「エレベーターの人影」と「すっぽん」が激しく嫌ぁなキモチになりました。怖いよりも嫌ぁ。これに比べたらブロックのもダーレスのも嫌度は段違いに低くて、つーか怖いってより萌える、かな…(違う意味で)
解説で菊地秀行が「読んでゾッとした」と名前を挙げている「アムンゼンの天幕」は、怖さよりも「狂気山脈」が思い出されて気になりました。天幕の中にいたのはアレだと言いたくなってしまう。またしても神話につなげちゃってスミマセン。*1
*1:でも「天幕」の方が先に書かれたみたい?