『王妃の紋章』

『HERO』『LOVERS』に続くチャン・イーモウ時代劇3部作の完結篇にして
中国映画の興収歴代トップ記録をぬりかえた大ヒット作(2006年)。
唐の王室を舞台に王と王妃、王子たちをめぐる愛憎劇を壮大なスケールで描く。

 ↑五代十国だって言ってたみたいな気がします。


 素晴らしく嫌な気分になる映画でした(笑)


 ストーリー展開の嫌なところは、ちょっと脇に置いておいて。
 中国産大作映画で楽しむべきは、人民解放軍全面協力のモブシーンだと思います。
 期待以上でした。
 スクリーンを、数百人のあでやかな宮廷女官が埋め尽くし、数千人の黄金の甲冑に身を固めた兵士が埋め尽くし、数千人の黒い甲冑の兵士が埋め尽くし、数千人の宦官?が、数万人の朝臣が埋め尽くします。
 『HERO』の時は「すごい!」と感動しながらも、「やりすぎ」「わざとらしい」とも感じたのですが、きょうは、「ここは天晴れ!と言うべきなのかなあ」と考え込んでしまいました。
 スプラッタ映画ファンがより過激な血しぶきを期待し、期待に応えた新作を称えるような感じで?


 なかでも度肝を抜かれたのは、マスゲームの戦争です。
 数千人の兵士が「射て!」「防げ!」といっせいに一つのアクションを行います。
 しかもターン制。
 自軍兵士は金で、敵軍兵士は黒。
 テレビゲームのウォーシミュレーションゲームを、馬鹿正直に文字通りに映像化すればこんな感じかなあと思いました。
 ここはやはり「天晴れ!」と言うべき。…なのか?


 いっしゅん爽快かと思いましたが、次の瞬間うす気味悪くなりました。
 そこに個人の武勇はなく、個人の機知はなく、個人の事情はなく、つまり個人の個性はなく。
 人間の命自体がひどく安い。
 戦いが終わったあとに数千人の宦官?がだーっと後かたづけをして「無かったこと」にしてしまう(表面だけ)のが、またうす気味悪く思えました。
 もうオリンピックを素直に楽しめそうにありません。
 開会式でフラッシュバックしそう…orz



 あと、中国人についての間違ったあこがれ(だれもが歩き始めると同時にカンフーを学びはじめる)を深める映画だと思いました。
 軟弱王子も、老いた侍医も、カンフーの心得があります。
 フツーの女の子すら、国王直属の忍者部隊の奇襲の初手をかわすぐらいの心得があります。
 やっぱり中国はすごい国だ!


 いろいろな意味で、かの国でしか作れない映画かも知れません?
 ぜひ、いま、劇場でご覧下さい。
(すぐ終わってしまう可能性があるから)


 きょうの映画でいちばん気に入ったユニットは、国王直属の忍者部隊です。