『ブレードランナー』

 ええ買い物をしたと思います。
 おまけディスクで原作者のディックが動いてしゃべっている所を見て、感動してしまいました。
 P.K.ディックは実在したんだ!(嘘)
 古めの海外小説だと、カバー折り返しの写真ぐらいしか原作者を見る機会がないので。


 大昔にレンタルビデオで観て意味がわかんないなあと思っていたのは、おそらく劇場公開版で、ラストのとってつけたようなハッピーエンドで混乱したんじゃないかと思います。
 あと、たぶん途中で寝てた。確実に。
 劇場公開版で観たことがないシーンがあって、驚いちゃった。


 『ファイナル・カット』を観て、萌えどころがようやく分かりましたと言うか、ハリソン・フォードデッカードよりもレプリカントのロイの方が英雄らしいと思いました。次いで、レイチェルかな。
 なんてわたしが悪役スキーだからという点を差し引いても、自分の出自を問い、自分の意思で行動し、冒険の末に自分の創造主と対面し、殺し、そして宿命を受け入れたロイは、ギリシア悲劇の英雄のようだと思いました。
 白い鳩は、西洋の映画だから、キリスト教で言うところの「聖霊象徴」と思うべきなのかなーと思いますが、日本人のわたしにはヤマトタケルが死んだ時に魂が白い鳥になって飛び去ったという話が連想され、やっぱりレプリカントのロイにも魂があったんだな、彼こそは英雄だったのだな、と思いました。
 つうか「雨の中の涙のように」の場面で2回ともボロ泣きでした。


 そのセリフを言うロイは、雨の中、スパッツ一丁+ソックスに運動靴の変態ぽい姿です。
 でもやっぱりロイには魂があって、彼こそが悲劇の英雄だったと思います。


 という話を師匠にしたらむっちゃくちゃ怒られました。
 師匠が主張するには、かのディック様が描きたかったのは、姿形は人間そっくりでも中身はまったく異質な存在が人間社会に入り込んでくる怖さであると。
 レプリカントを人間らしく描くのは、ハリウッドお得意の安っぽいお涙頂戴アレンジであると。
 ハリウッドの術中にはまっているわたしは、だから駄目なんだと。


 でもやっぱりロイこそが悲劇の英雄だと思うんだけどなー。
 と、むかし原作付きの作品が映画化された時にいっぱい文句を言ったことを棚に上げて主張してみる。


 本年もよろしくお願いします。