『新訂版コナン全集4 黒河を越えて』
- 作者: ロバート・E.ハワード,Robert E. Howard,宇野利泰,中村融
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/07
- メディア: 文庫
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なんか3巻は表題作を読み通すのがしんどかった記憶があるのですが、4巻は面白くてサクサク読めました。
「赤い釘」が面白かったです。
文明圏を越えて遙かに南、忘れ去られた古い城塞都市に閉じこめられ、太陽も青空も知らず、明かり取りから差し込む光と、怪しげな人工光のもとで少なくとも3世代に渡って血族同士で殺し合いを続ける部族の話です。
彼らの戦場は、古い部屋と通路と階段、きっと扉をくぐるたび、階段に踏み出すたびに待ち伏せしたりされたりしてたのでしょう。少なくとも3世代に渡って。
1巻から読んできて、蛮人コナンが広大な草原で大軍を率いたり密林や砂漠を踏破したり、な話ばかり読んできたので、人工的な閉鎖空間なんて異常な舞台が出てくるとは思わなかったので、驚きました。
むしろ四角くて閉鎖された空間って、退廃した未来と親和性があると思ってた。さもなくば、コンピューターゲーム。
70年前に死んだ作家に、これらの思い込みを鮮やかに覆されるのは、心地よい驚きでした。
そしてもう一点、このシリーズで今まで見なかったタイプのキャラクター、「女戦士」が出てくるので驚きました。
パワーが足りない分を、スピードと、短気とすら言える果断さで補っています。
主な戦果は、小ボス撃破、ラスボス?撃破。
男勝りに帯刀した女性キャラはこれまでにも出てきたかも知れません。
が、コナンの世界では彼女たちは無理しちゃってる感というか、いま武装していきがっていても、ホントに戦闘になったら男には歯が立たないんだろうな的な感じが漂っています。
それ以前に、女性キャラはだいたい過剰なくらい女性的だったように思います。
なのに「女戦士」ヴァレリアですよ。
「なぜあたしが男の生活をしてはいけないのか、それがおかしい!」
と叫び、彼女を押し倒そうとした上司をぶっ殺し、コナンにも隙を見せず(このシリーズでは、コナンに抱き寄せられた瞬間に女性キャラはへなへなとなるのが定番)、男と正面切って斬り合って勝つ女性キャラははじめて見た!
いやもうホントに、マッチョなハワードがこういう女性キャラクターも書くのか、と興味深く読みました。
ただ、惜しむらくは、姉御肌と言うよりはあばずれ属性に近い感じがして、我が国で言うところの萌えキャラの範疇には入らないのではないかな、と…。
表題作「黒い河を越えて」も、今まで読んできた作品とは少々テイストが違う印象を受けました。
物語スタート時のコナンシリーズらしいミッション<魔導士を倒して蛮族の大反攻を阻止せよ!>はあっさり失敗。続く<蛮族の大反攻を砦の守備隊に知らせろ!>も失敗。意表をつかれました。
代わって<先回りをして開拓団に危険を知らせるんだ!><開拓団を安全地帯まで送り届けろ!>ミッションが展開されます。
美しい姫ではなく、王ではなく。
ごくふつうの人々(しかも赤の他人)を助けるため、身を捨てて敵を防ぎ止めたゲストキャラの普通の若者と老犬のがんばりに胸が熱くなります。
コナンはいつものコナンでした。