山岸凉子『妖精王2』
- 作者: 山岸凉子
- 出版社/メーカー: 潮出版社
- 発売日: 2011/08/20
- メディア: コミック
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卓球スポ根マンガです。
くるくるお姫様髪の「元」天才少女と、元気な黒髪ショートの女の子がダブルスを組みます。
女の子二人の友情物語で、恋愛のれの字もない。淡い憧れのエピソードすらない。
これはありなのだろうか。
山岸凉子と言えば三白眼+骨ばった「骨」の入っている肉体です。
その山岸がデビュー当時(編集部の指示で)キラキラ瞳のぷにぷにした肉感のキャラクターを描いていたことがあるというのは、話には聞いてはいましたが……想像以上にぷにぷに!して!いた!
「元」天才少女が復活をかけた大会の決勝で因縁の相手と接戦を繰り広げるのですが、細かく割られたコマで接戦ぶりが具体的に詳しく描写されてます。
初出1969年だそうですが、当時の少女漫画ってこんなに密度が濃かったのかなあ?
たしか「スポ根ものを構想していたが、スポーツ(なんだったか忘れた)が連載中の大御所とかぶるので変更を指示された。それで卓球の薄い入門書を買ってきて最初から最後まで読んで描いた。卓球経験はない」というエピソードがあったと聞いたのですが(「Otome continue vol.6」の萩尾望都との対談で?雑誌が手もとにないので確認できませんごめんなさい)、タネ本が薄い入門書1冊だけとは思えない濃密さだと思います。
当時の少女漫画ってこんなに密度が濃かったのかなあ?
この巻の中では「ストロベリー・ナイト・ナイト」が好きです。
ヒロインが髪型からファッションから80年代全開で味わい深い。
山岸作品には「読者に向かって状況を説明している主人公が、実は状況を正しく認識していなかった」パターンがしばしば見られます。
共に収録されている「メデュウサ」も同系統と言えるのかも知れません。
「実は状況を正しく認識していなかった」ことがラストで一気に明らかになるパターンよりも、じわじわとほのめかされて行く方が、好みです。最近。
なんでかな、山岸凉子の毒成分が染みてきてるのかなあ…
「実際の状況がどうであったか」は、「ストロベリー・ナイト・ナイト」は読者に対しては明示されています。主人公は最後まで状況を理解しませんが。
主人公にも読者にも状況がはっきりと説明されないまま終わってしまう「化野の…」は最高潮に、怖い。
でも不思議なことに時々読み返してしまうんだ。
「化野の…」はスペシャルセレクション?『夏の寓話』に入っています。