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『もうひとりのシェイクスピア』

映画

 どんぶり勘定な大作SF映画の巨匠、ローランド・エメリッヒ監督の新作が東北に来たよ!


 私は知っています。
 この作品が本国では2011年に公開されたことを。
 DVDスルーかと覚悟していたので、劇場で観られてうれしかったです。
 1日1回、1週間ぽっきりの公開でもうれしいです。


 さてさて。
 非SFの非パニック映画です。
 歴史物です。
 いちおう歴史物ははじめてではなくて、メル・ギブソン主演の『パトリオット』というアメリカ独立戦争を描いた歴史物作品も過去に作っています。
 が、これは悪名高き『アメリカゴジラ』の次作で、完全な頼まれ仕事だと思うなあ私は。


 「シェイクスピア別人説」と言うものがあるそうです。
 日本で言ったら「真希波・マリ・イラストリアスはゲンドウと同級生説」か?
 まともな者なら相手にしないトンデモ説でありながら、ちょっと調べるとほどよく証拠が出てくる感じとか。
 シェイクスピア別人説には、共同ペンネーム説、正体はフランシス・ベーコン説、オックスフォード伯爵説などがあるそうです。


 この映画ではオックスフォード伯爵説を採用しています。
 その動機は、政治的目的(エリザベス一世の後継者争いの世論誘導)、政治的目的の奥には愛が。


 脚本家をちゃんと雇っただけあって(?)けっこう考えられてるシナリオだと思います。
 が、過去と現在とを行ったり来たりする構成が分かりにくかったかも知れません。
 この時代の予備知識があるとスッと頭に入ったのかなあ。


 画は良かったです。
 重厚な衣装に背景。この人はいつもモブシーンが佳いと思います。
 現代パートから過去へつながる場面もちょっと面白かったです。


 ふだん巨大円盤とか、ヘリが凍って落ちるとか、ロサンジェルスが砕けちって海に沈むとか、ヒマラヤを乗り越えてくる海水とか大風呂敷でどんぶり勘定な画ばかり見せられてるから気が付きませんでしたが、エメリッヒ監督は絵画的な画が好きなのかなあ。
 端正な構図と陰影を強調する、動きの少ない画面が。
 ラスト近くの、ジェームズ1世のななめ後ろに控えたロバート・セシルの、黒い服が半ば背景にとけ込み考えに沈んだ横顔が浮かび上がっているのが、静かにズームアウトしてくのとかゾクッとした。



 でもどうでしょう。
 登場人物の全てがはっきりした欠点を持ち、古い愛がよみがえり人々に祝福されることはなく、失われていた家族の絆が取り戻されることはなく、運命に導かれるように出会い集った者たちもやがて別れ別れになり、べつべつに死ぬ。
 主人公と敵のボスがラストで直に顔を合わせ、お互いを理解(共感?)しますが、それが「劣等感」の部分でだったりとか、そしてその後は二度と会わないだろうこととか。
 そういうのを「人間が描かれている」と言うのなら、エメリッヒ作品の中で最も人間が描かれている作品と言えるでしょう。


 この作品、エメリッヒ監督の完全自腹制作なのだそうですよ。
(道理で劇中にSONYロゴもVAIOロゴも出てこない訳だ!)

 DVDおよびBDは6月4日発売とのこと。
 レンタルも同時期と思われます。
 みんなでエメリッヒ監督を応援しましょう!
 そして次回作で、腰が抜けるほどアホな大災害を描いてもらいたい。


 だって、中途半端にリアルだと大震災を思い出しちゃうじゃないか。
 エメリッヒ先生には、安心して笑える映画を作ってほしいです。

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