『福島原発の闇』

福島原発の闇 原発下請け労働者の現実

福島原発の闇 原発下請け労働者の現実

 絵は水木しげるさんに描いてもらいたい。藤沢記者はそう思ったものの、水木さんの原発についての考えを聞いたことはなかった。しかし、水木さんの作品からうかがえる生き方を見る限り、筆をとっていただける可能性はあるかもしれない---
 水木さんは藤沢記者の話に耳を傾けると、すぐに「やってみましょう」と答えた。原発をとりまく状況を即座に把握した勘の鋭さに藤沢記者は驚いたという。そして、水木さんはこう語った。
 「まるで戦場のようですな」
 戦争の実像を描いてきた水木さんは、原発で働く労働者の姿に、無責任な大本営体制のもとで末端兵士として死にかけた自らの戦争体験を重ねていた様子だった。
                   2011年の解説より

 水木しげる×「原発ジプシー」の堀江邦夫のコラボ。
 初出は1979年。
 水木先生がこのような仕事をされていたとは、とんと存じませんでした。


 福島原発の中を描写する、ねっとりとしたベタと息苦しいほどの点描(時々配管類の中にぬぅと目玉が覗いている)
 その中をはいずり回る水木ねこぜの人物は、防護服に身を固め個体の識別は困難です。
 原発に対する得体の知れない恐怖、人間の無力感を、"いま"感じている気持ちを、30年前にぴったりと絵でもって言い当てている。
 という言い方は逆かも知れません。
 私たちが知ろうとしなかっただけで、あれはずっと前からあったのだから。