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『ゲニウス・ロキ』

ゲニウス・ロキ (リュウコミックス)

ゲニウス・ロキ (リュウコミックス)

 地霊と書いて「ゲニウス・ロキ」とルビを振るのは建築界の用語らしいのですが、私がこの言葉を知ったのは、確実に「帝都物語」でしょう。帝都物語での用例は忘れましたが、ゲニウス・ロキ、すっごく使いたくてたまらなかったことをはっきり覚えています。
(とか言って記憶違いだったらどうしよう)


 実在の建築家・伊東忠太(1867-1954)に妖怪退治をさせるという、帝都物語で育った者には懐かしくて痛がゆいトキメキをもたらす作品です。
 古い建物がとり壊され西洋風の新しい建物がさかんに建てられた明治。
 以前そこに建っていた建築物の(霊的な)役割を読み解き、その役割を引き継ぐ新しいデザインを選べる建築家こそ天才の名にふさわしいっ
 ああ、なんとときめくのでしょうか。


 光が強ければまた闇も深い、と言います。
 硬質で、マンガ絵と言うよりもペン画に近い立体感、そこにべっとりと平面的なベタが多用される画面は、文明開化に沸き立つ明治の裏側の、闇の深さを感じさせるよう。
 通り一本それれば江戸期以前の闇夜の暗さが残っている時代だっんだろうなあ明治。
 まあ、実際に明治を見たわけではないですが。


 コミックス1冊で完結だそうですが、いつか続きが読んでみたいです。
 天才・伊東忠太(メガネ)の仕事が都市デザインに関わる話も読んでみたい。
 首都の霊的防衛とかッ



 いえ、それをしないのが格好いいのかも知れません。
 登場人物が少なめで天才・伊東忠太(メガネ)のすごさを知る者も選ばれた少数である雰囲気、天才の仕事の本当の価値を知るのは後世の天才で、後世の天才が価値を知ってくれたならそれだけで十分じゃないかというストイックな雰囲気が。
 伊東が持つ忘れ去られつつある妖怪たちへの共感は、説明も言い訳もなく、天才的な仕事だけを残して世を去っていった天才の孤独と通じるものがあるのでしょうか。


 …妖怪に行き会ったときはちょっとミーハーっぽかったかも知れませんが。
 そこがまた萌えるのですが。伊東忠太(メガネ)