『二百三高地』

二百三高地 [DVD]

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 突然ですが。
 『坂の上の雲』が待ちきれず、日露戦争つながりで見てみました。


 子供の頃にテレビで戦闘シーンを見て怖くなって消して(笑)
 後は中途半端知識で「壮大な失敗作」と思っていたから敬遠していました。
 題材も製作年代も古くさく思えてさ…


 なにごとも原典を見ずに判断してはいけないなあと思いました。


 今だったら大人数入り乱れの戦闘シーンは後ろの方はCGで、大砲もCGでございましょう。
 背景だってCGになるかも知れない。
 ところがこの作品はぜんぶエキストラと実物大の野外セットな訳です。
 どうりで15億円もかかった訳です。
 見て下さい!遠景は特撮です!ミニチュアセットです!
 失われた伝統芸能を見る思いです。
 CGの遠景って、遠近法的には合ってるはずなのに奥行きに寸詰まり感を感じることもが多いのですが、特撮背景はその窮屈さが少ないかもしれません。合成なのは丸分かりですが。


 平成作品の『坂の上の雲』の描く明治はどこかこぎれいでアカ垢抜けてると気付きました。
 『二百三高地』の薄汚くて泥臭い明治を見てよ!
 俳優の顔つきからして違ってます。
 (たぶん私は昭和50年代と明治の区別がついてない)


 内容ですか?
 仲代達矢の乃木大将が全てを持って行っているなあと思いました。おわり。
 あと、丹波哲郎が格好良くてびっくり。
 よく働きよく怒る切れ者キャラを好演。
 丹波児玉×仲代乃木で鉄板…げふんげふん
 いままで『大霊界』の丹波哲郎しか知らなかったってのは、損をしていたのかも。



 中盤さだまさしの『防人の歌』が流れる所で、画面が暗転して歌詞が表示されるのにも驚きました。
 なんて思い切った演出なんだ!と一瞬呆然としたのですが、もしかしたらこれが噂のトイレ休憩タイム?
 いまでこそ3時間近い映画を一気に上映しますが(トイレは自己責任で)、かつては2時間を超える映画には休憩タイムがあると聞きましたよ。
 これが…そうなのか…(ゴクリ


 今とは違う時代、違う世界での映画に思えてワクワクしてきました。
 映画の舞台が、じゃなくて、映画が作られた時代が。
 映画が元気で、俳優が泥臭く暑苦しく、CGがなく蒸気機関が…じゃなくて特撮とカメラワークが特異な発達を遂げた世界。


 これは、思想的な議論抜きで見ることができた、時効ならではの感想かも知れません。