『戦場でワルツを』

戦場でワルツを 完全版 [DVD]

戦場でワルツを 完全版 [DVD]

 イスラエル発の長編アニメーション。
 19歳の時にイスラエル兵として参加したレバノン内戦。
 その記憶がすっぽり抜け落ちていることに20年近くたってはじめて気がついた主人公は、記憶を取り戻すため当時の仲間たちに会いに旅に出る…
 『おくりびと』がアカデミー賞を取ったときに最大のライバルと言われてて、上映を見たもっくんが「ぜったいあっちが取ると思った」と言っていたらしいので気になっていました。
 イスラエルと周辺国では賛否両論、特にイスラエル製品の輸入を禁じられているレバノンでも海賊版DVDが出回ってて(それほどまでに人々が見たがってるのか!)議論百出らしい。
 町山智浩氏が絶賛。
 一部の人?が絶賛してるのに、日本国内ではなかなか見られないってのが、ひどくそそります。
 このたび、めでたくDVDが発売されたのでいそいそと買い求めました。


 ぱっと見トゥーンレンダリングかと思っていましたが、どうやら違ったようです。


 内容については、噂だけ聞いて期待しすぎてたかな…
 テーマを「一個人の戦争体験とトラウマ」に絞ることで、政治色を極力廃した模様。
 確かに、批判派が言うようにイスラエルの立ち位置については何も述べていない。
 トラウマ部分は……ところにより国や民族レベルを突き抜け、人類という種の普遍的な体験を語っているかも知れない。
 トラウマ記憶の描写として突然スタイルが変更される部分は、なるほど、と思いました。
(一方で、アニメーションを「表現手法として選んだ」という印象を受けました。アニメ畑一本で仕事をして来てアニメで大勝負したくてしょうがない、というよりは)
 ただ、主人公にとってトラウマとなったのは、「アウシュビッツを体験した我々が、同じようなことを許してしまったのか、止められなかったのか」という思いがあるからだ的な指摘が作品中でなされていて、民族と民族の歴史からは完全にニュートラルとは言えないでしょう。

 アニメーションとしては、日本のアニメを見慣れた目にはエキゾチックで新鮮に見えました。スタイルが全く違うモノ、当たり前が当たり前じゃないものを目撃するワクワク感。オープニングからグッと来た。


 個人的な思い出ですが、バシール・ジェマイエルの暗殺を伝える10秒ぐらいの短いニュース映像を当時見た。ような気がする。
 葬儀の場面だった。
 支持者がこの人の棺を頭上に担ぎ上げ、御輿のように激しくシェイクしてた。
 みんな怒りまくってて子供心にもすごく怖かったし、ついでに、あんなにシェイクしたら棺の中身がどうにかなってしまいそうで怖かった。はみ出たり何かがこぼれたりしたらどうするんだって。
 当時、死体というものがすごく怖かったので。何だったんだろう。
 あれがバシール・ジェマイエルの葬儀だったのかも知れない。違うかも知れないけど。