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『偽書「東日流外三郡誌」事件』

偽書「東日流外三郡誌」事件 (新人物文庫 さ 1-1)

偽書「東日流外三郡誌」事件 (新人物文庫 さ 1-1)

 「東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)」について知ったのは、高橋克彦の『龍の柩』という 素 晴 ら し い 小説で、です。
 津軽の旧家?から発見された古文書群で、今までの日本史の常識を覆すような内容で、世間の度肝を抜きました。
 発見者の名を取って「和田文書」とも総称されます。
 ざっとまとめますと、東北が蝦夷と呼ばれていた時代、津軽を中心に大和朝廷に匹敵する強力な王朝があったが滅びた。
 その記録が正史に残っていないのは、歴史というものが勝者によって書き残されるものだからである!


 前段が田舎者にはグッと来る訳です。
 また、後段がある種の人々にクリティカルヒットする訳です。


 この本の筆者は青森県地方紙の記者です。
 文書発見者の和田喜八郎氏とその周辺の動きを、現在進行形の「事件」として追った記録です。
 文書の初出というか活字になって出版されたのが1975〜77年頃、その後、真贋論争や盗用訴訟が火を吹きます。
 和田氏は1999年9月末に死去。
 現在では、「発見者」和田氏の創作である、と結論が出ています。


 一読して思うことは


 「東日流外三郡誌」=真っ黒


 ということです。
 文書自体の真偽よりも、「醜い」嘘だという点で。


 この本に書かれている、和田氏の潔くない言い逃れや遁走の姿勢は、不愉快でした。
 「東日流外三郡誌」に関わったがために信用を失い、経済的な損失を被った人や自治体もあります。なんとも言えない嫌な思いをした人も沢山いたようです。
 シャレになってないんです。


 論争に勝つ禁じ手に近い必殺技に「相手が人間性において劣る」と証明する方法があるそうですが、この本は、その路線であるように思われます。事実なのでしょうけれども。
 その効果は、私にとって抜群でした。
 もう「東日流外三郡誌」関連作品を無邪気に楽しむことはできない。
 私は、「良い」嘘…大勢を楽しませるホラに近いような…がある、という立場ですが、それは幻想なのかなあ、と寂しい気持ちになりました。