『偽書「東日流外三郡誌」事件』
- 作者: 斉藤光政
- 出版社/メーカー: 新人物往来社
- 発売日: 2009/12/07
- メディア: 文庫
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津軽の旧家?から発見された古文書群で、今までの日本史の常識を覆すような内容で、世間の度肝を抜きました。
発見者の名を取って「和田文書」とも総称されます。
ざっとまとめますと、東北が蝦夷と呼ばれていた時代、津軽を中心に大和朝廷に匹敵する強力な王朝があったが滅びた。
その記録が正史に残っていないのは、歴史というものが勝者によって書き残されるものだからである!
前段が田舎者にはグッと来る訳です。
また、後段がある種の人々にクリティカルヒットする訳です。
この本の筆者は青森県地方紙の記者です。
文書発見者の和田喜八郎氏とその周辺の動きを、現在進行形の「事件」として追った記録です。
文書の初出というか活字になって出版されたのが1975〜77年頃、その後、真贋論争や盗用訴訟が火を吹きます。
和田氏は1999年9月末に死去。
現在では、「発見者」和田氏の創作である、と結論が出ています。
一読して思うことは
「東日流外三郡誌」=真っ黒
ということです。
文書自体の真偽よりも、「醜い」嘘だという点で。
この本に書かれている、和田氏の潔くない言い逃れや遁走の姿勢は、不愉快でした。
「東日流外三郡誌」に関わったがために信用を失い、経済的な損失を被った人や自治体もあります。なんとも言えない嫌な思いをした人も沢山いたようです。
シャレになってないんです。
論争に勝つ禁じ手に近い必殺技に「相手が人間性において劣る」と証明する方法があるそうですが、この本は、その路線であるように思われます。事実なのでしょうけれども。
その効果は、私にとって抜群でした。
もう「東日流外三郡誌」関連作品を無邪気に楽しむことはできない。
私は、「良い」嘘…大勢を楽しませるホラに近いような…がある、という立場ですが、それは幻想なのかなあ、と寂しい気持ちになりました。