『ミイラはなぜ魅力的か』
- 作者: ヘザープリングル,Heather Pringle,鈴木主税,東郷えりか
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2002/05
- メディア: 単行本
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最初に断っておきますが、私はミイラが魅力的だとは思いません。
怖いし。
この本が魅力的だとは認めます。
人間の歴史の文字に記されていない部分は、興味深く、好奇心を抑えることができない。
でもミイラは怖いんです。
読むあいだ、豊富なカラー口絵(ミイラ写真)に手が触れないよう細心の注意を払いました。表紙も背表紙もミイラ写真だから手が触れないよう細心の注意を。
数年前に書店で見つけて読んでみたいなあと思ったのですが、買って帰っても自宅で保管できない(怖いから)と思ってやめました。
かつて『アイスマン』の本を好奇心に負けて買ってしまって、そのあと扱いにすっっごく困ったんだ。
この本自体は、とても魅力的だと思います。
エジプトのミイラだけでなく、シルクロードの白人種ミイラ、インカの少女の凍結ミイラ、北欧の沼地の底から見つかったボッグマン、不朽のキリスト教の聖人たち、スターリンをはじめとする東側の指導者たち、エジプトよりも古いかも知れないチンチョーロ人などなど耳新しい話題から、研究者の台所事情に政治情勢まで最新ミイラ事情が満載です。
それだけではなく、
死んでいる人間と、それに夢中になる生きている人間、
もの言わぬ存在でありながら、太古の世界について雄弁に語る者、
太古に死んだ者でありながら、我々と同じ喜怒哀楽を持つ者、
太古に死んだ者でありながら、時には現代政治にも影響を及ぼす存在、
手厚く葬られた死者か、物質か、
墓あばきか、学術調査か、
知識欲か、金と名声か、
真逆のものが同時にあるというのが面白いんだと思う。
ミイラ自身も、万人に定められている塵に返る運命を(なぜか)免れているという点で、真逆の要素を含んでいるから面白いんだと思う。
見ると怖いけどな。
著者自身はミイラの魅力については、シンプルな考えのようです。
「見れば分かる」
不思議なものを前にして自然にわき起こる感情があるって。
さあ、こうやって感想もまとめたことだし、明日朝イチで返却に行くことにします。
写真が怖いからな。