『THIS IS IT』

 マイケル・ジャクソンの死で取りやめとなったロンドン公演のリハーサル映像で構成された映画です。


 冒頭の、バックダンサー志願者たちの目の輝きとマイケルへの崇拝ぶりを見て「マイケルは神になる資格があるのではないか」と


 て言うのは言い過ぎとしても、映画を観た全ての人がマイケルの天才ぶりを知り、惜しい人を亡くした、と涙にくれるでしょう。


 スクリーンに登場するのは、スキャンダルにまみれ、裁判を抱え、整形に失敗し、慢性の痛みと薬物依存に悩んでいるという情報から想像される姿とは、真逆の、光り輝く姿でした。


 50歳なのにあの体のキレはいったい!


 音楽にも構成にもライティングにも演出にも、アイディアを出す出す出す。
 頭の中に、確固とした公演全体のイメージがあるとしか思えない。
 ダンス一芸の人ではなかったのだ。


 完璧主義には見えましたが、苛烈ではありませんでした。
 陽性のリーダシップというべきか。
 スタッフがみんなイイ顔をしていた。


 照明係をステージ上に集めて自ら説明している場面がありました。
 「ここにライトが集まって」
 「僕がこう入る」(実際にキメキメでポーズ)
 「そして音楽」(ノリノリで踊り出すマイケル)
 カメラは、間近で聞いていた照明係のおじさんがニコッとする所をとらえています。いい笑顔だった。おじさん、さてはマイケルの大ファンだな?
 手の空いているスタッフがリハ風景を見学しています。彼らの歓声に応えて、リハなのにどんどんテンション上げてくマイケル。いい人すぎる。


 「ファンが聞きたい曲をやろう!」
 「ファンが見たことないような凄いものを見せてやろうよ!」
 ファンの歓声を聞けば、いつでも何度でもHPが全回復するタイプに見えました。
 こういう人をスターって言うんだろうなあ。
 今までマイケルのことを知らなくて、もったいないことをした。
 そして誰かはマイケルの爪のあかを煎じて飲むべきだと思った。


 これらの印象と、9割方完成しチケットも完売していた公演を前に急逝という事実は、まったく真逆のものです。
 スタッフやファンも残念に思っているでしょうが、マイケル自身の、無念はいかばかりか。
 マイケルは神になる資格があると思う。合掌。