『本因坊殺人事件』

本因坊殺人事件 (幻冬舎文庫)

本因坊殺人事件 (幻冬舎文庫)

 作者の2作目の作品、非「浅見光彦シリーズ」


 三国志大戦を引退したら、非電源系の伝統的なゲームを学ぼうと自分に誓っていました。
 バージョンアップや撤退や倒産などメーカーの事情で、拙いながらも築き上げたスキルを発揮する場が永遠に失われるのは、空しい。
 誓いに従って取りかかりました。
 碁テーマのミステリから(…)


 世代交代が進む中、旧世代最後の一人として孤高の戦いを続ける棋士・高村本因坊
 タイトルを失ったその夜、高村は不可解な死を遂げる。
 謎を追うのは、若き俊英、浦上九段。高村本因坊の最後の対局者でもある。
 残された棋譜が伝えるメッセージとは!?


 犯人と黒幕には魅力が薄く、犯行のディテールには興味を引かれなかった(これは個人の好みでしょう)
 純粋さと潔癖さとある種の無知の属性を持つ主人公が、ヨゴレを知ってそれを許す成長物語であり、時代の変わり目と、滅び行く孤高の旧世代人が描かれていた、といま感想をまとめるために書き出したら激しくグッと来ましたよ!


 が、個人情報の取り扱いに時代差を感じました。
 なんとなれば、舞台は30年前の世界なのです。
 探偵役がプロの碁打ち&碁に詳しい新聞記者ってのがワクワクする所なんですが、今だと成立しないのでは。



 探偵役(プロの碁打ち)「このライターの製造元を知りたいのです」
 デパート店員「はい、どうぞ」
 探偵役(プロの碁打ち)「このライターにこの刻印を入れた人を探しています」
 メーカー「こちらの団体様から35個ご注文をいただきました、こちらが連絡先です」
 探偵役(プロの碁打ち)「このライターを落とした人を探しています」
 団体事務局「会員30人に記念品として配布しました。いま電話をして聞いてみますね(目の前で電話し出す)」
 団体事務局「29名の方は手元にあると言っています、1名の方は人手に渡したと」
 探偵役(プロの碁打ち)「その1名の方とは?」
 団体事務局「この方です(名簿を見せ、指さして見せる)」



 ↑4行目からツッコミメーターが振り切れてしまいました。
 探偵役は、有資格者(警察関係者)であるか、個人情報の入手になんらかのトリックが欲しいところです。
 今の個人情報に対する神経質すぎ〜る傾向には疑問を感じるのですが、こんなザルな管理もどうかと思います。
 「ちょうどいい」って難しい。


 ジャンルが違う物を比較してはフェアではないかも知れませんが、下の『二重被爆』の方が「文章が上手い」と感じます。
 「正確であること」「読者に誤解させないように」をいちばんに心がけた文章、というか。論理的で、説明的で、漢語が多くてゴツゴツしていて、空想の余地が少ない感じ?