『ペルセポリス』
イラン出身の女性イラストレイターの自伝的コミック作品のアニメ映画です。
ネットのどこかで「イランのちびまる子ちゃん」との評を目にしました。
なるほどと思いました。
男の子みたいな格好をしてブルース・リーに夢中なちびマルジは超かわゆい。
作者は現在、フランスで活躍しているらしく、それで?映画もフランス語だったぽい。
作者は1969年生まれで石田ショーキチと同世代。か?
ちなみにさくらももこは1965年生まれ静岡育ちだそうです。
ですがイランに生まれた女の子は、日本に生まれたわたしたちが知らない革命と、イラン・イラク戦争を経験することになります。
欧米に憧れ、ロックに憧れ、同じ瞳の輝きで政治犯として投獄されたおじさんをヒーローと仰ぎます。
投獄されて拷問された話を、まるで冒険譚を聞くように瞳を輝かせて聞き入りますが、ほんとうの苦痛をマルジは理解していたのでしょうか。
再び投獄されたおじさんが最後の面会者にマルジを指名するくだりは、涙なくしては見られません。
先の大戦以来、政変や戦争には無縁で、マルクスでもなんでも文庫で買えて政府の悪口も言いたければ言いたい放題なわたしたちの知らない世界を見ました。
きっと主人公マルジのご両親はインテリでお金持ちなのでしょう。
マルジの人生の選択肢には「国を出る」という項目がつねにありました。
両親がマルジをフランス語で教育される学校へ行かせたのは、国の行く末を予感したからでしょうか?
その一方で「イランから出て、自由世界で自立できるように」という両親(とくにお母さん?)の願い、それを可能にする教養と思想は、両親からの貴重なギフトであると同時に、マルジを縛る呪いと転じなかったでしょうか。
「(宗教や伝統にも疑問を抱けるようになった)お前は今のイランでは暮らせない、イランに居ちゃ駄目だ」と言われてマルジがヨーロッパに旅立ち、なじめず挫折して、大人になってイランに戻り、そこでもなじめず苦悩する姿を見て胸が痛みました。
ちびマルジの無邪気さがこの上なく可愛かっただけに、なおさら。
- 作者: マルジャン・サトラピ,園田恵子
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あと、ペルセポリスの作者の人と知り合いだか師匠だかのフランス人マンガ作家の次の作品が、良かったです。
彼の兄と兄の「てんかん」と家族を描いた自伝的作品です。
アニメ絵とは真逆の世界ですが、絵がいいんだ。
- 作者: ダビッド・ベー,フレデリック・ボワレ,関澄かおる
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追記)
インテリでお金持ちって言っても、マルジの家はそこまでお金持ちじゃないのかも?と漫画の方を読んで思いました。
両親は国を出ようとしないのです。
たぶん、一家で国外へ行っても裕福な暮らしができるような種類のお金持ちじゃないんだと思う。お父さんはイラン国内なら専門職として良いお給料をもらえるけれども、国外では移民として専門知識を生かせない安いお給料の仕事しか就けないのか?
それで危険を承知で両親はイラン国内にとどまって、マルジだけを国外に送り出したのかなあ、と。