「玉砕総指揮官」の絵手紙

「玉砕総指揮官」の絵手紙 (小学館文庫)

「玉砕総指揮官」の絵手紙 (小学館文庫)

 硫黄島指揮官、栗林忠道の手紙集です。
 彼の「絵手紙」の絵は、どう見ても絵を習ったことのない感じの「ゆるーい」味わい深い絵です。
 苛烈な作戦を指揮した軍人がこれを描いたのかとギャップに驚かされます。
 絵手紙は、軍人として、官費でアメリカ留学をしていた時期のものだそうです。
 1929-30年(栗林39-40歳)かな。
 解説によりますと、

 当時「太郎君」は、まだ文字が読めなかった。だから父は、絵を描いて文を添える方法を思いついたのである。アメリカから留守宅に送られてくる絵手紙は、母親が息子に絵を見せながら読み聞かせたとのことである。

 その情景を想像しただけで、涙がこぼれてしまいます。
 後半は、戦地から家族あてに書き送られた手紙です。
 本の最後に、軍指揮官として「玉砕」を東京に伝える電文が掲載されています。文語調の、非常に「お堅い」文章です。
 それまでのおっとりした手紙文との落差が、またわたしを泣かすのです。