『猫のゆりかご』
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,伊藤典夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1979/07
- メディア: 文庫
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面白いか面白くないか、とで分類したら、わたしにとっては、面白かったのです。
まず、しれーっとした書きっぷりが好きだ。
悲しい悲しいすごく悲しいとかもうむっちゃくちゃ傷ついたとか大声でわめき散らすような書き方を、わたしは好まないからです。自分の傷ついた気持ちを、世界中に押しつけるかのような。押しつけがましい感情を。
悲しいんだけど、怒ってもいいんだけど、でもそんな自分を離れたところから見ているような、冷静さ?…違うなあ…諦念?…うーん?…それと、自分の不幸を語りながらもユーモア?…あるいは人生の皮肉?を見つけずにいられない、そんな人を愛します。
ただ、だんだん、『スローターハウス5』→『タイタンの妖女』→これ(実はこの感想をまとめる前にもう『母なる夜』に手をつけちゃってる)、と来て、サッパリ笑えないよなあ、という思いが強くなってきました。
作者のユーモア?/悲惨な状況の比率が、作品によって違っているような気がしないでもなくはないし、そもそも最初から笑っちゃ駄目で、ようやくそれに気がついて来たのかもしれない?
物語は面白かったです。
へんちくりんな登場人物が右往左往するへんちくりんな物語で、細かく章分けされた、スケッチみたいな場面のつらなりで、いびつなボールのように次はどこにはずんで転がって行く分からない。
作家だという「わたし」の語りで物語が進行します。
語られている時代よりずっと後、過去の「わたし」とは違った見方で回想してるらしい。それはすぐに分かりました。も一つすぐに推測できるのは、「違った見方」の理由の一つは、ボコノン教というけったいな宗教に改宗したことだろうと。
きっと物語が進めばボコノン教について詳しく語られ、「わたし」が改宗した理由も語られるのだろうなあ、それを読んだらボコノン教がすばらしい宗教に思えちゃったりして!?と思ってのんびり読んでいました。
が。
物語が後半に入ると、冒頭のボコノン教の言葉からタイトルから、脈絡なさすぎると思われたエピソード群が一つのラインを示すようになり、この辺で読者の方のわたしは「おおお」と思いました。*1
そして、物語の最後で「わたし」がどのような状況で(あるいはどのような目的で)この物語を綴った(「語った」ではなかったのだ)のかが分かり、読者の方のわたしの口はパックリと開いてしまい、長く閉じることができなかった。
*1:この喜びこそがわたしが本を読む理由なのだだだ!