『アークエンジェル・プロトコル』
- 作者: ライダモアハウス,Lyda Morehouse,金子司
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/09
- メディア: 文庫
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ほとんど自宅と化した狭苦しい事務所に、うずたかく積まれた埃をかぶった資料。その一角で時間を持て余しながら三文小説のページを繰っているのは、警官崩れの私立探偵。そして、ドアを開けて入ってくる美貌の依頼人……とまあ、ここまでなら古典的なハードボイルドの常套だが、ちょっと違うのが、探偵と依頼人の性別が逆転していること。くすぶっているさえない事務所の主が女性で、革ジャンとジーンズを身につけたダヴィデ像のような、モデルと見まがうばかりの美貌の持ち主が、新任の男性警官なのだ。
加藤速人 「解説」より
全部は打ち明けてないふうの依頼人、私立探偵が扱う範囲を越えているふうの依頼内容(なんで私に?)、アメリカ私立探偵作家クラブ賞受賞作品というオビのコピーはなるほど納得でした。
人々が、現実とネットの二重生活をする未来。
攻殻機動隊相当のサイバーパンク度がとても落ち着きます。
で。
ネット上に「大天使」が現れるそうな。
物語の舞台である未来のアメリカは宗教国家なので、作中では大部分の市民がマジモンの奇跡と思っているけれども、そんなのバグか、騙りなんじゃないかなあ、もしかしたら、もしかしたらシn…、と思いながら読んでいたら、予想の斜め上を行く感じで、驚いてしまいました。
冒頭が私立探偵物として王道をゆくように思えたので、主人公が、人生に対してどこか冷淡でなげやりな態度を改め(それは過去の悲惨な出来事ゆえであり、再び傷つくことを恐れているゆえであって)、もう一度真剣に闘ってみる、誰かを信じてみる、などの立ち直りカタルシスを期待していたのですが……………日本人にはちょっとピンとこなかったことだなあ。早々に"事実"は分かっちゃうけど、心情的に"認める"までに紆余曲折が必要、みたいな話なので、ヒロインの認めたくない気持ちに共感できたら、もっともっと楽しめたのかも。
トータルではたいへん楽しく読んだのですが、ハンサムの定義とともに、やっぱ欧米はちょっとセンス違うなあと思う瞬間でした。
『ダ・ヴィンチ・コード』とこれしか読まずに言うのもなんですが、一昔前よりも信仰の問題は地雷ではないのかしら。
本邦において長く続いた「熱血=カッコワルイ」の時代の後の、熱血再評価の変遷を連想しました?
まいどまいど適当なことを言っていてすみません。
本国では4部作まで出版されていて、続編の構想もあるとか。
ぜひ続編も読みたいです。早く翻訳されろ!