『人間以上』
- 作者: シオドア・スタージョン,矢野徹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1978/10
- メディア: 文庫
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悪戯好きの黒人の双生児、生意気な少女、発育不全の赤ん坊、そして言葉さえ知らぬ白痴の青年。かれらは人々から厄介者として扱われていた。しかし、かれらはコンピューター顔負けの頭脳、テレパシー、テレキネシス、テレポーテーションなどの能力を持つ超人だったのだ! それぞれが無駄に使っていた超能力も五人が結集すれば、人類を破滅にみちびきうるほどの恐ろしき力となるのだ……。ミュータント・テーマの傑作長篇
文庫カバーの作品紹介より
反吐が出ました。
『夢みる宝石』に登場した「人間以下」とされた人々があれほどいじましく美しいのに、こちらの作品に登場する「人間以上」な奴らの不遜さはどうしたことでしょうか。
書かれた順に、第二章→第一章→第三章と読んでみました。
わたしは、最初、ローンとミス・キューはむかし夫婦だった(けれどもローンが変すぎて別れた)と思っていたので、第一章のあんまりな展開に…展開に…(口から何かが)
第二章のミス・キューはロクでもないババアだと思ったけれど、これほどひどい人生に値するほどにロクでもないババアだとは思えませんでした。彼女の不幸の過半数は、「人間以上」(=ミュータント=新人類)に、ただ人間として出会ったというだけではないか。
知力・力において「人間以上」の存在がもしもいたとして、彼らがわれわれ人間のモラルや価値観を共有できるか否か、また、共有できずとも理解に努めた上で尊重したほうがいいのかどうか、また尊重するとしたらその理由ないしメリットは何か、などは興味深いテーマだと思います。
が、概論→具体例になると。ミス・キューという一人の女性が、物のように扱われるのを、自分が何を相手にしていたかを知ることなく死ぬのを読むのは、気分のいいものではありませんでした。
たぶん、わたしがもっと若くて、自分が旧世代とは異なるより優れた何者かであると根拠なく思いこんでいた頃だったら、ミュータントの方にあっさり感情移入できて、ここまで不快には思わなかったかもです。旧弊な価値観に縛られた、子供たちの新時代に適応的な長所を理解できない、母親らしい情緒が足りない人に育てられる不幸、みたいな読み方もできそうなので。
ところでわたしは『サイキック・フォース』というゲームに執着してをります。
あれもまた「ミュータントもの」と言えるでしょう。と無理矢理つなげる。
『サイキック・フォース』の世界における「ミュータント」は超能力者(サイキッカー)です。
変異種であり、現行の人類を超える力を持ち、まだ少数派だけれども、完全に無視出来るほど数が少ないわけではなく、こんご増加する可能性がある、とこれでトラブルが起きなかったら嘘だろうよという、あやうい世界が舞台になっています。
しみじみと思えば、あのゲームで描写されるミュータント(サイキッカー)は、わたしたちよりも強い力を持つけれども、その感情面、思考過程において異質な部分は強調されず「彼らもまた人間だったのだ」((c)ラヴクラフト)という側面が強調されていたように思います。
そんでラスボスさんですけれども。
(わたしは彼がひいきなのであまり悪口は言いたくないのですが)
超能力でやりたいこと→世界征服
続編で→サイキッカーで軍隊作ってみました
人間からサイキッカー作ってみました(*)
未来で→クローンでサイキッカー増やしてみました(*)
世界征服って聞くとスケールが大きいようですが、その実、わたしたちが歴史で学んだ権力欲というものから一歩も出ていないと思います。せっかく進化した人類が成し遂げることが、独裁者のまねっこではショボ過ぎます。もっと大きな視点でものを考えようよ!
軍サイキッカー部隊ってのも言葉で聞くと凄そうだけど、歩兵の、攻撃力と移動力を強めた上位ユニットでしかなさそうな。
上位ユニットと言っても、燃費が悪くて、補充しずらくて、その上コンディションによって戦闘力にばらつきが出そうな感じ。意外と使える局面は限られたりしてして。
(*)印の件は、全ての人間がサイキッカーになれれば紛争のタネはなくなる訳で(実際はコストがかかって副作用も大きくてそんな簡単には行かないんだろうけど)、そのうえ人類進化に関わる重大な研究成果でそれこそノーベル賞ものだと思うのですが、歩兵の上位ユニットとしてのサイキッカーの、安定供給しか考えていないっぽくて、想像力が不足していると思います!
もしも3作目があったらなら、地上の権力者ごときで満足しないで、人類の進化とか宇宙の法則とかに干渉するような、もっとスケールのでかいことをやらかして欲しいものです。
わたしはリチャード・ウォンを応援しています!
つか愛してる!?*1 *2