『日本沈没 第二部』
- 作者: 小松左京,谷甲州
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2006/07/07
- メディア: 単行本
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甲州先生の文章は、見間違えようがありません。
読みながらムズムズと添削したくなるのです。3文をくっつけて1文に直したくなったりするのです。クイズみたいに。昔はここまでムズムズしなかったと思うのですが。
あと、見間違えようのない甲州名物の寒冷地描写で「わーい」と喜んでしまうファンなので客観的評価不能であることを、先にお詫びしておきます。
ほんとに蛇足みたいな説明ですけれども、小松左京の大ベストセラー「日本沈没」の続編にあたります。
これは共著、に近いような近くないような、変則的な形で書かれています。
wikipediaの「日本沈没」の記事に詳しいです↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%B2%88%E6%B2%A1
一時期、甲州先生の執筆予定の遅れの理由がぜんぶこれだったりとかしてやきもきしたものです。じゃなくて、一読して思ったのは、知らずに読んだら甲州オリジナルと思ったかも。なぐらい甲州印な感じでした。わーい。
日本沈没って一言でいいましても。
天→沈没時の火山噴煙がまきちらされ、地球全体の気温の低下をもたらすかも知れない。
地→世界地図が書きかわるほどの天変地異です。太平洋を囲む政治状況に大きな変化をもたらすでしょうし、いちどきに生まれた数千万の難民が、各地でさまざま軋轢を生むのは想像にかたくありません。
人→当事者の心に、生涯消えない傷を残したのは明白でしょう。
どう考えても、地球環境から国際情勢から国土を失った国家の行く末から個人のトラウマに人生の紆余曲折まで、あらゆるレベルで、いくらでもドラマを生み出し得る大設定だと思います。
それらが小松左京と第二部チームによりどう描写されるのか(どこが強調されるのか)興味を持って読み始めました。
でも、南米に移住した日本人ががんばって開墾しちゃうと地球温暖化!?というのは考えが及ばなかったことだなあ。ちょっと「風が吹けば桶屋が儲かる」を連想すrじゃない、地球環境を激変せしめる勤勉民族万歳(ちょっと嘘あります)
甲州先生は、1951年生まれです。
勝手な思いこみかも知れませんが、最後のプロジェクトX世代という印象があります。
先生の日本人観、とくに勤勉という美徳に対しては、わたしから言わせると「買いかぶりすぎ」みたいに思っちゃう。いまどきの若者は、先生が信じているほど体力も根性ないような気がします?*1
ラストの中田首相の独白は甲州先生にかぶって、ああ、なるほどと思いました。
対して、Cの男・鳥飼外相は誰なんだろうと気になりました。モデルがいそうに思ったんだ。
と思っていたら、今日の読売新聞のインタビュー記事に載っていました。
(http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20060801bk03.htm?from=yoltop)
小松左京その人だったのか…
受け取ったバトンを戻しちゃだめじゃん(微妙にネタバレ)
あと、日本がなくなっちゃったから中国・アメリカの二大超大国の野望が太平洋上で激突、その狭間で綱渡り外交をする日本、という話をもう少し詳しく読みたかったです。示唆のみで残念でござった。もうちょっと尺が長くても良かったかなあ。
「第二部」のラストシーンと小松左京が語るところの第三部の構想について、直撃世代であるところのわたしの師匠に質問したところ、左京未来史では「日本沈没」→(ミッシングリング)→「果しなき流れの果に」なんだと言っていました。
ナウでヤングなわたしは「Gガンダム」と「星界の紋章」を連想したと言ったら叩かれた。
夏休みの宿題は「果しなき流れの果に」の感想文となりそうです。
*1:うーん、パラレル世界の話だから、われわれ以降の世代もあの世界では艱難辛苦に鍛えられているのかなあ。てか若い人はあんまり物語に出てきませんでしたが。