『後宮小説』
- 作者: 酒見賢一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1993/04/25
- メディア: 文庫
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舞台は中国。
新皇帝のお后候補として全国から集まった女の子たちが、ふさわしい教養とマナーを身につけるため教育を受ける。教育期間がテスト期間を兼ね、日頃の行いと成績で誰がお后になれるか決まるらしい。
切磋琢磨しながら、お后様になる日を夢見る女の子たち。
しかし、王朝の寿命は尽きつつあった。
反乱軍が首都に迫る。
落城目前の王宮に残された女の子たちは武装して戦おうとするが…
悲しいけれど爽やかな作品だったと記憶しています。絵柄もジブリっぽい?清楚な印象で。
原作がコレだそうな。十ン年を経て、はじめてつながりました。
そうかそうか、と本を開いた。
一行目、
腹上死であった、と記載されている。
突っ伏した。
聞くところによりますと、酒見賢一氏の登竜門となった日本ファンタジーノベル大賞は、副賞?がアニメ化だったのだそうです。どんな作品が来るかも分からないのにアニメ化だけは大決定というチャレンジャーな企画だったのだそうな。
あとがきで作者自身も述べています。
最初は、
(無謀なことをするものだ)
と私は思った。内容があれでは子供向けアニメはちと辛くはないか、という思いを関係者の方々は皆抱いていたに違いない。
『後宮小説』自体は文句なしに面白かったです。
この人の、しれーっと可笑しいことを描くスタイルが大好きです。
なんとなく、実生活で腹が立つ出来事に遭遇しても、その場でストレートに表に出したりしないで、後からネタに仕上げて持って来そうな感じがします。3歩くらい引いた、しれーっとした描きっぷりで。
想像してたら萌えてきたっ。
(もちろんご本人にお会いしたことなんかないから想像ですけれども。)
登場する女の子がとても…その…こういう言い方が適当かどうか分かりませんが、とても萌える。
どことなく全寮制の女子校モノみたいで、微エッチで微百合で、狙ってる風でもあるけれども、しれっとした描きっぷりで中和されて?あざとすぎず、のどごしなめらか。
あと、主人公の親友が鬱っけのないアヤナミ風でとてもツボだったじゃなくて受賞が平成元年(1989年)だったことを考えると、すさまじく先駆的な作品だという気が気が気が…とこういうほめ方でいいんじゃろか。
複数の歴史書を突き合わせて(控えめなツッコミを入れながら)小説に仕立てる、『泣き虫弱虫諸葛孔明』を先に読んじゃった人間には既視感を感じさせる体裁をとりながら、王朝も架空なら歴史書も架空だという、人を喰った作品です。
なのに架空の歴史書からとは思えぬ詳細な引用ぶりに、発表当時は多くの人が思わず歴史年表にこの国を探してしまったと聞きます。
ところで。
酒見氏にはクトゥルー神話作品を書いてほしいなあと思います。いっぺんでいいから。
ぜひニャルラトテップを。
この作品に登場する渾沌(こんとん)というキャラクターを見てそう思ったんだろう、と突っ込まれるとまったく反論できないのですが。
いやいやいやそれだけではなくて、古代中国の魔導書を、ネタ特盛りで作り込んでくれそうな気がするのです。
ついでにメタフィクションレベルでも度肝を抜いてくれそう。
読みたい。すっごく読みたい。