『Lovecraft』
- 作者: Keith Giffen,Hans Rodionoff
- 出版社/メーカー: Vertigo
- 発売日: 2004/11/01
- メディア: ペーパーバック
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メインのエピソードは、ソーニャ夫人との出会い〜短い結婚生活の時期にあたるようです。ほとんどフィクションですけれども。
アメコミはカラーがデフォだそうで、この本も全ページカラーです。
水彩…うーん、アクリルガッシュなのかなあ。場面により彩色のスタイルが奔放に変更されてて、線画に4色指定しただけみたいなのを想像していたわたしはページをめくるたびにびっくりびっくりであります。
例えば。
現実の場面では、輪郭線・アミカケきっちりのペン画に、彩度の低い色が乗せられています。対して、非現実の場面ではペンによる輪郭線はなくなり、極彩色がにじみ入り交じった絵になってしまいます。怖ええ。
NYは緻密なペン画で描かれ、セピア色に塗られています。なぜかラヴクラフトとネクロノミコンだけが色鮮やかです。
圧巻は、ソーニャとのNY生活。
ラヴクラフトはあたかも普通の人のようにソーニャとのデートを楽しみ、プロポーズし、式をあげ、創作に打ち込んでいます。「私の半生はずっと恐怖で満ちていたんだ。現実よりもリアルな悪夢に。でもソーニャ、君はそれらとは正反対のものをわたしの人生にもたらしたんだ」*1と妻に感謝します。しかし、万物の色は七色ににじんでいます。もはや空は青くないし、木々も緑ではありません。空気は不穏に揺らぎモザイクのようにありとあらゆる色彩が入り交じっています。リアルな悪夢は、ラヴクラフトの気づかぬうちに現実世界に浸透してきていたのでしょう。かっちりした線画・まともな(笑)ラヴ先生の言動と、色彩の落差が、キました。目覚めたまま悪夢を見ているような、自分でも気がつかぬうちに深い狂気の淵に沈んでしまったような、鬼気迫るものでした。ゾクゾクしました。
赤いリンゴを描くのに赤えのぐしか使えない人間なものですから、このような色使いをする人は尊敬せずにいられません。羨望を感じます。どこで勉強したのかなあ、とバイオグラフィーを見たらミスカトニック大学と書いてあった………
とと、よく見たらそれはシナリオの人だった。絵の人は独学だそうです。こういうセンスって生まれつきなのかなあ。
萌えた所。
はじめてソーニャがラヴクラフトの家に遊びに来たとき、デート中にラヴクラフトは「死体安置所にて」を語り聞かせます(おいおい)
「この話、気に入ったかい?」
「もう!あなたがそばにいなかったら怖くて死んでたわ」
「ははは、それは気に入ったってことさ」*2
びったり密着する二人。
こぉのバカップルども〜とほほえましい気持ちになりました。