『キングダム・オブ・ヘブン』

 とても面白かった。また見たいです。
 平野耕太の漫画に出てくるような(逆だ逆だ)十字軍スタイルの大軍勢と、サラディン率いるイスラムファッションキメキメの大軍勢が対峙するシーンは、しびれた。
 鎖かたびら…(;´Д`)ハァハァ
 ブロードソード…(;´Д`)ハァハァ
 と思わず顔文字を使いたくなる感動でした。これこそが制作費潤沢なハリウッド映画の醍醐味だと思います(;´Д`)ハァハァ
 前半は、もしかしてこれはRPGなのだろうか?とうすく笑いながら見ていたのです。油断していました。
 中盤、キメキメ十字軍ファッションにおおお!?と身を乗り出し、終盤は、手に汗握る籠城戦にすっかり引き込まれました。一本で3度美味しい。また時間を作って見に行きたい。


 そして、すんごい美味しいキャラがいたのです。
 エルサレム王ボードワン4世!
 長袖・襟の高い衣装・手袋・ローブと、露出ゼロの衣装に銀の仮面。
 病気(ハンセン氏病)で具合悪いらしくて立ち居振る舞いがけだるげで、中盤は相当無理してるんでゆらゆらしてるの。ハワー。
 腐女子ねらい撃ちかと思った……(ないないない)*1


 えっと、はなしをもどして。
 主人公(オーランド・ブルーム)は、田舎で鍛冶屋をしていました。
 奥さんが自殺という大罪を犯したので、キリスト教徒の村ではつまはじき者です。
 そんなある日、十字軍の騎士の一行が村に来ました。
 騎士のリーダーは突然告白します。
 「今までほったらかしでごめん。私は君のパパだ。
  いっしょにエルサレムに行こう!戦場での働き次第では君主になれるぞ」
 エルサレムってのは、ハミ出し者や食い詰め者がアメリカンドリーム(?)を抱いて目指す場所なのでしょうか。
 村の司祭もすすめます。
 「奥さんが大罪を犯した以上、あんたも村にいられまい。エルサレムに行って奥さんの罪をあがなってはどうか」
 いろいろあって、オーランド・ブルームはエルサレム行きを決意します。
 「妻の罪も、僕の罪も、エルサレムに行けば救われるのでしょうか?」
 「うん、まずはエルサレムについてからだな」
 お父さんは大らかです。でも、救済が救済で救済をっと思い詰めるオーランド・ブルームと、いまいち話がかみ合っていないような気がします。*2
 それでいろいろあって、お父さんがイキナリ死んじゃうんだよー!
 びっくりした。
 お父さんはいまわの際に、オーランド・ブルームに騎士の誓いを立てさせます。
 「騎士ってのはな! たとえ死に至るとも正義を貫くもんだ!」
 そして、後継者に指名します。(お父さんはサーの称号を持つ人だったのだ!)
 「お前は俺の誇りだ」 ←と言い切れるほど長くつき合ったのか
 夢もなくただ食べるために働いていた平凡な青年が、己が誰かを知り、使命を与えられる瞬間です。
 とても感動的だったのですが、私は不安になりました。
 もと鍛冶屋の青年が、訓練もせずに剣を扱えるのかと。部隊を指揮して戦闘できるのかと。
 道々、老練な部下に教わるのかな、きっとそうに違いない、と思っていたら、イキナリ船が難破しちゃうんだよー!
 びっくりした。
 オーランド・ブルームは、ひとり、海岸に流れ着きます。
 そこで小ボス戦を経て馬とガイドをゲット(ファンファーレ)、エルサレムに向かいます。
 だがエルサレムは、エルサレムは、陰謀うずまく政争の町だったのです!
 予備知識ゼロでエルサレム入りしたオーランド・ブルームの運命やいかに!


 と、前半は、あらあらあららな急展開にズッコケながら見ていたのです。
 どうもオーランド・ブルームのお父さんって人は、武力だけの人じゃなくて政治的影響力もある人だったらしく、エルサレムでは「あなたが息子さんですか」と色んな人が頼ったり因縁つけたりするのです。お父さんがエルサレムでナニをしていたか詳しく知る暇がなかったオーランド・ブルームはさぞ困ったであろう。
 映画では、キリスト教勢力がエルサレムを押さえていた時代で?ヨーロッパ人の王様がいました。
 エルサレム王が穏健派で、サラディンと和平条約を結び、戦争したがる諸侯を抑えていたようです。オーランド・ブルームも父の後継者として、穏健派の巨頭たれと期待されていたようです?
 エルサレム王にご挨拶した時に、「お父さんから何て言われてた?」と聞かれ、オーランド・ブルームは元気に騎士の精神論を答えてしまうのでした。(だって予備知識ゼロだし)
 エルサレム王が、ちょっと固まっちゃったみたいに見えて、くすりと笑ってしまいました。←この項、勘違い多数(汗)訂正記事はid:wang2zhonghua:20050531


 あと、ちょっとネタバレですけれども、オーランド・ブルームは強かったです。剣を使わせても強いし、籠城戦では根性も度胸も知恵も見せます。
 根性と度胸は、あのお父さんの息子、生まれついての英雄の資質、とかそんな感じで説明がつくとして?
 筋力は、鍛冶屋さんだからあったんだろうと思います。でも、剣のテクはいつ磨いたんだろう。画面の見えないところで経験値をためていたのでしょうか。
 そして、籠城戦での数々のアイディアは「鍛冶屋さんだから」で説明がつくのでしょうか。
 うーん。


 あと、高い身分よりも、自分の足で歩くことに価値があるって主張とか、エルサレムに対する考え方とか、現代的かもなあ、と思った。

*1:痛ましい素顔がポロリな場面もあるよ…

*2:エルサレムにいる連中は、ヨーロッパの田舎の人々にゃ想像もつかんことをしていたのでした。理想の新国家建設!異宗教・異民族との共存!この「真実」をオーランド・ブルームが感動とともに受け入れて、水を得た魚のように生き生きとしだすかと言うと、寡黙なせいか、あんまりそうは見えなかったような?