『新本格魔法少女りすか』

新本格魔法少女りすか (講談社ノベルズ)

新本格魔法少女りすか (講談社ノベルズ)

 知り合いの女子高生から押しつけるように貸し出されたので読みました。
 守備範囲外かつ不勉強で知らなかったのですが、作者氏は売れに売れてる新進気鋭作家なのだそうですね。よく平積みになってる「戯言シリーズ」と同じ作者だ、と言われて「ああ」とヒザを叩いたもののそれ以上の知識はなく。表紙絵からラノベの人だと思っていたのですが、ユリイカで特集が組まれた事があるそうで。ナニモノなのでしょうか…?


 それよりも、これはニャルラトテップのお導きなのでしょうか。
 作者は…ラヴクラフティアンだったのです!
 さいきん、手に取る本にひんぱんにラヴ先生の影が見え、少々こわくなってきました。いや、現代日本のオタクの間ではラヴクラフトは基本教養に近く、こちらに知識があれば見つけられるし知らなければ気がつかないってだけの話なのでしょうが、いちおう戸締まりには気をつけて、海沿いの町には行かぬ事にします。
 この作品自体は神話作品ではなく、いくつかのなじみ深い魔導書が登場し(使用はされない)、偉大な魔法使いであるりすかのお父さんの称号の一つが「ニャルラトテップ」、第三話の英タイトルが「From Beyond」、冒頭には「アウトサイダー」の一節「稚き頃の記憶が、恐怖と悲哀のみしかもたらさぬ者こそ、不幸なるかな」が掲げられているのみです。
 神話ハンター*1としてマークすべきでしょうか?


 「魔法の国」長崎県から佐賀県の小学校に転校してきた「赤き時の魔女」りすか(10歳)と、人間のキズタカ(10歳)が力を合わせ悪い魔法使いを成敗していくお話です。と書くと可愛いお話みたいですが…
 りすか、の名前から連想されるとおり、「魔法の杖」代わりのカッターナイフで体を傷つけて流れる血を用いて魔法を行使します。血の赤を美しいと思えないと厳しい…。戦闘にあたり、りすかが必ず大けがをしなきゃならないってのも痛々しい。ぅぅぅ。
 「日本語」のぎこちない、不思議ちゃんのりすかは愛らしいのですが、語り手のキズタカくんが小憎らしくて小憎らしくてどうしょうもない。たしかに頭のいい子供なんですが、同級生も大人も「凡俗」と見下して、りすかすら「使える駒」とみなしている。こんな子供が目の前にいたら殴っちゃうな!が凡俗の大人の偽らざる感想です。
 その一方で、りすかは純粋にキズタカくんのことを好きみたいで(りすかの分として、もう一発殴りたい)、二人で冒険するうちにキズタカくんのひん曲がった性根がだんだん治っていく過程を楽しむ作品なのかなあ、と思って読んでいたのですが、2話めにしてひどい事件が起きてしまってひっくり返りました。3話めはその衝撃でゆらいだ二人の関係を修復するお話で、信頼関係のゆらぎ→雨降って地固まる的なエピソードにまとまっていますが、2話での出来事が劇的すぎて、納得が行かぬ!
 わたしが「りすか」なら、どんなにプラスの面があったとしても切っても切れぬ事情があったとしても、キズタカくんとはもう今までのようにはつき合えないと思うです。「魔法少女りすか」これにて完。て感じ?


 返す時、どう感想を述べようか…
 魔法の設定と戦闘スタイルが「ジョジョの奇妙な冒険」みたいだね、って言ったら…怒られるだろうなあ…。

*1:と思っているのは自分だけで、こっちが神話に呪われているのかも。