『クトゥルー 1』

クトゥルー〈1〉 (暗黒神話大系シリーズ) なんと表紙は山田章博
 青土社クトゥルーシリーズを読み始めました。似たような話が多くて疲れるので口直しに読みかけの『火星年代記』も平行して拾い読みしています。たまに『火星年代記』の方がおっかないことがあります?
 ホントに拾い読みしかしてないので全部は語れないのですが、とりあえず、記憶にあるのに創元文庫のラヴクラフト全集には載ってない話が載っていたので安心しました。つかお弟子さんの作品をラヴクラフトの作品だと勘違いして覚えていて赤面です。


・「ルルイエの印」 オーガスト・ダーレス
 この楽しそうな雰囲気はどうしたことでしょう。
 コレってラブクラフト的にはバッドエンドなのに、変質していく自分が怖い!という葛藤はかけらもなく、新しい能力に目覚める誇らしさと戻るべき場所を見つけた喜びしかない。おまけに同行する女性もちゃんといるし、もうじき家族も増えるから寂しくなんかないよ、みたいな。なんだかなあ…………。
 ラヴクラフトの作品の中にも同じ運命を受け入れた人もいましたが、あの人はもっと悩み、恐怖の末に狂気の淵をわたり彼岸に至ったという印象があって、ああ、あの人はもう違う人になってしまったんだなあ、と納得が行ったものでした。
 それに同行者も男性だったヨ!(またそれか)


・「破風の窓」 ラヴクラフト&ダーレス
 そうそうそう、これこれ!
 魔法陣を描いて真ん中に座ってわくわくして窓を見上げ、そこに映るビジョンに息をのむなんて、まるで映画を見るみたいだと思ったものでした。映るのは邪神か手下限定ですけど。
 いま例えるならば「ディープ・ブルー」みたいな感じ?とも思ったのですが、BGMもなく編集もされてない生映像たれ流しでしょうから、ライブカメラの方が近いのかなあ、前にso-netのハムスターのライブ映像を見たけれど寝てるばっかりでつまんなかったなあ、クト様も同じじゃないかしら、などとさまざま連想されましたが、この話のキモは実はカメラじゃなくてェ、という点なので、まったくいらない心配をしてしまいました。


・「無人の家で発見された手記」 ロバート・ブロック
 惨劇の後、無人の家には手記だけが残っていて、という話です。
 その手記を書いたのは子供だから「そいつらがどうするつもりかわかったので、ぼくはこわい」みたいな文章で、それゆえ変な迫力があって怖かった記憶があります。
 が、冷静に考えればぱにくった子供は手記なんか書かないし、あまつさえご本尊の登場をラストまで引っ張ったりしないだろ、と。
 きっと、どばーんと絵で。うーん、ちょっと題材が難しいからそれも無理あるかなあ。