オーガスト・ダーレス
ラヴクラフト先生には、キリスト教のパウロのような人がいました。
オーガスト・ダーレスです。
彼は、作家としてクトゥルー神話作品を書き、邪神たちに4大エレメントを割り振り、対立する善なる「旧神」を設定しました。
若いファンを励まして神話作品を書かせ、自ら立ち上げたソレ系専門出版社「アーカム・ハウス」からアンソロジーとして出版しました。コリン・ウィルソンが『ロイガーの復活』『精神寄生体』そして『賢者の石』(id:wang2zhonghua:20040724)を書いたのも、もダーレスの挑戦に乗った結果だと聞きます。
ラヴクラフト先生の遺稿を整理し、未完成のメモに加筆して作品に仕上げ世に出しました。*1
こんにちのラヴクラフトの名声は、彼の努力の結果なのは間違いありません。ダーレスがいなかったら、ラヴクラフトは没後数年で忘れ去られたでしょう。
今回ラヴクラフトを再読して思ったのは、私が知っていたクトゥルー神話はダーレスのそれだったんだなあ、ということです。
ラヴクラフト先生の作品は、もっと曖昧模糊としていました。
例えばスティーブン・キングの作品のいくつかで、ラスボスがあられもなく登場し主人公たちが死にものぐるいの反撃を開始する、そのとたんに物語がどこか陳腐になる、そのような愚を犯さない賢さ、あるいはおくゆかしさがあって、それはチラリズムの精神に通じ………ないか。*2 *3
そして、不思議に思うことは。
ダーレス氏は、ずっと手紙だけのやりとりで、ラヴクラフト先生と直接会ったことはないらしいのです。